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涼
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すゞし
で、
辷らした
白い
手を、
若旦那の
胸にあてて、
腕で
壓すやうにして、
涼い
目で
熟と
見る。
其の
媚と
云つたらない。
妖艷無比で、
猶且つ
婦人の
背を
抱いて
居る。
一條でも
風に
縺れて
來ますのを、
舌の
先で
吸寄せますと……
乾いた
口が
涼く
成つて、
唇も
濡れたんですから。
先づこれから
峠に
掛らうといふ
日の、
朝早く、
尤も
先の
泊はものゝ三
時位には
発つて
来たので、
涼い
内に六
里ばかり、
其の
茶屋までのしたのぢやが、
朝晴でぢり/\
暑いわ。
あでやかな
顏は
目前に
歴々と
見えて、ニツと
笑ふ
涼い
目の、うるんだ
露も
手に
取るばかり、
手を
取らうする、と
何にもない。
掌に
障つたのは
寒い
旭の
光線で、
夜はほの/″\と
明けたのであつた。