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すゞし
先づこれから
峠に
掛らうといふ
日の、
朝早く、
尤も
先の
泊はものゝ三
時位には
発つて
来たので、
涼い
内に六
里ばかり、
其の
茶屋までのしたのぢやが、
朝晴でぢり/\
暑いわ。
あでやかな
顏は
目前に
歴々と
見えて、ニツと
笑ふ
涼い
目の、うるんだ
露も
手に
取るばかり、
手を
取らうする、と
何にもない。
掌に
障つたのは
寒い
旭の
光線で、
夜はほの/″\と
明けたのであつた。
と
微笑んで
見せて、
少いのが
其清い
目に
留めると、くるりと
𢌞つて、
空ざまに
手を
上げた、お
品はすつと
立つて、しなやかに
柳の
幹を
叩いたので、
蜘蛛の
巣の
亂れた
薄い
色の
浴衣の
袂は