トップ
>
歴然
>
ありあり
ふりがな文庫
“
歴然
(
ありあり
)” の例文
浦子は辛うじて蚊帳の外に、障子の紙に描かれた、胸白き浴衣の色、腰の
浅葱
(
あさぎ
)
も黒髪も、夢ならぬその我が姿を、
歴然
(
ありあり
)
と見たのである。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
満願寺屋
(
まんがんじや
)
水神
(
すいじん
)
騒ぎの一件か、それとも、ことによったらいろはがるたの——ではあるまいか、ともう
歴然
(
ありあり
)
と持ち前の気負いを見せて来るのだ。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
して見れば、此の、その銭は渡されぬという簡単な文句には、あの先達ての様子といい、長田の性質が
歴然
(
ありあり
)
と出ている。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
或時
暗黒
(
くらやみ
)
の中で
瞑想
(
めいそう
)
している
刹那
(
せつな
)
、忽然座辺のものが
歴然
(
ありあり
)
と見えて、庭前の松の葉が一本々々数えられたとソムナンビュリストの夢のような事をいったりした。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
また、誰が見ないまでも、本堂からは、門をうろ抜けの
見透
(
みとおし
)
一筋、お宮様でないのがまだしも、鏡があると、
歴然
(
ありあり
)
ともう映ろう。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
木賃の枕に目を
瞑
(
ねむ
)
ったら、なお
歴然
(
ありあり
)
、とその人たちの、姿も見えるような気がするから、いっそよく念仏が申されようと考える。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
醜い汚い筋をぶるぶると震わせながら、
麸
(
ふ
)
を
嘗
(
な
)
めるような形が、
歴然
(
ありあり
)
と、
自分
(
おの
)
が瞳に映った時、宗吉はもはや
蒼白
(
まっさお
)
になった。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
烏が一羽
歴然
(
ありあり
)
と屋根に見えた。ああ、あの下
辺
(
あたり
)
で、産婦が二人——定命とは思われぬ無残な死にようをしたと思うと、屋根の上に、姿が何やら。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
撫肩
(
なでがた
)
に重荷に背負って加賀笠を片手に、うなだれて行く
細
(
ほっそ
)
り白い
頸脚
(
えりあし
)
も、
歴然
(
ありあり
)
目に見えて、
可傷
(
いた
)
々々しい。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
涙を払つて——唯今の
鸚鵡
(
おうむ
)
の声は、
私
(
わたくし
)
が日本の地を
吹流
(
ふきなが
)
されて、
恁
(
こ
)
うした身に成ります、其の船出の夜中に、
歴然
(
ありあり
)
と聞きました……
十二一重
(
じゅうにひとえ
)
に緋の
袴
(
はかま
)
を召させられた
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
辺
(
あたり
)
からは、峰の松に
遮
(
さえぎ
)
られるから、その姿は見えぬ。
最
(
も
)
っと
乾
(
いぬい
)
の位置で、
町端
(
まちはずれ
)
の方へ
退
(
さが
)
ると、
近山
(
ちかやま
)
の
背後
(
うしろ
)
に海がありそうな雲を隔てて、山の形が
歴然
(
ありあり
)
と見える。……
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
殊
(
こと
)
に崖を、上の方へ、いい
塩梅
(
あんばい
)
に
蜿
(
うね
)
った様子が、とんだものに持って来いなり、およそこのくらいな
胴中
(
どうなか
)
の長虫がと思うと、頭と尾を草に隠して、月あかりに
歴然
(
ありあり
)
とそれ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(ああ、厭じゃ、が、黙っちゃおられん。何も見まい、聞くまいと思うに、この壁を透して、賊どもが、魚見の
巌
(
いわ
)
にかたまりおるのが、月夜の遠距離のように
歴然
(
ありあり
)
と見える。)
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これは、と思うと、縁の突当り正面の大姿見に、渠の全身、
飛白
(
かすり
)
の紺も
鮮麗
(
あざやか
)
に、部屋へ入っている夫人が、どこから
見透
(
みすか
)
したろうと驚いたその目の色まで、
歴然
(
ありあり
)
と映っている。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれども、その……ぱっちりと瞳の
清
(
すず
)
しい、色の白い、髪の濃い、で、何に結ったか前髪のふっくりとある、
俯向
(
うつむ
)
き加減の、
就中
(
なかんずく
)
、
歴然
(
ありあり
)
と目に残るのは、すっと鼻筋の通った……
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
胸が
轟
(
とどろ
)
いて
掻巻
(
かいまき
)
の中で足をばた/\したが、
堪
(
たま
)
らなくツて、くるりとはらばひになつた。目を
開
(
あ
)
いて耳を
澄
(
すま
)
すと、物音は聞えないで、
却
(
かえっ
)
て
戸外
(
おもて
)
なる町が
歴然
(
ありあり
)
と胸に描かれた、
暗
(
やみ
)
である。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
歴然
(
ありあり
)
と、ああ、あれが、
嬰児
(
あかんぼ
)
の時から桃太郎と一所にお
馴染
(
なじみ
)
の城か、と思って見ていると、城のその屋根の上へ、山も見えぬのに、
鵺
(
ぬえ
)
が乗って来そうな雲が、
真黒
(
まっくろ
)
な壁で上から
圧附
(
おしつ
)
けるばかり
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし
目前
(
まのあたり
)
、
歴然
(
ありあり
)
とその二人を見たのは、
何時
(
いつ
)
になっても忘れぬ。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“歴然”の意味
《形容動詞》
明白なさま。
(出典:Wiktionary)
歴
常用漢字
小5
部首:⽌
14画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“歴”で始まる語句
歴々
歴
歴史
歴乎
歴代
歴山
歴史上
歴劫
歴訪
歴史年代