此樣こんな)” の例文
新字:此様
勿論もちろん此樣こんなことにはなにふか仔細しさいのあらうはづはない。つまり偶然ぐうぜん出來事できごとには相違さうゐないのだが、わたくしなんとなく異樣ゐやうかんじたよ。
必然さう云ふ風になるべき一般の國民性にもとゐしたものに相違ない………つい此樣こんな事を考へて自分は危く五番町の停留場を通過ぎやうとして急いで電車を下りた。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
これ此樣こんなうつくしいはなさいてあるに、えだたかくてわたしにはれぬ、のぶさんはせいたかければおとどきましよ、後生ごせうつてくだされと一むれのなかにては年長としかさなるをつけてたのめば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
頼んで來た夫故それゆゑ此樣こんなおそくなり其上空腹ひだるくもありモウ/\わきの下から冷汗ひやあせが出るはやく飯をくはせくれよと云ながら内へ這入はひり長兵衞を見てるさうにコレハと云しのみにて辭宜じぎをなせば長兵衞は苦笑にがわらひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「私はうして、此樣こんなな處へ來たのだらう。」
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
當番たうばん水夫すゐふからは何等なにら報告ほうこくうちけつして信じません。いわんや此樣こんな平穩おだやか海上かいじやう難破船なんぱせんなどのあらうはづい、無※ばかなツ。
鐵と石ばかりの紐育ニユーヨークに居た時分、炎暑の爲めには幾人も人死があるやうな恐しい日には、自分はよく青々した日本の海邊うみべを思出したが、いざ日本に歸つて此樣こんな寒い風に吹かれると又反對に
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
我れは一足はやくて道端に珍らしき花などを見つくれば、おくれし信如を待合して、これ此樣こんなうつくしい花が咲てあるに、枝が高くて私には折れぬ、信さんは背が高ければお手が屆きましよ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまわたくし黒暗々こくあん/\たる印度洋インドやう眞中まんなかおいて、わが弦月丸げんげつまるあとふかの奇怪きくわいなるふねてふと此樣こんなことおもした。
又もや此樣こんな空想にひながら、私は大宮の松林を出て、間もなく汽車で上野の停車場についたのであるが、丁度晴れた秋の夕暮、本郷の家路へと、不忍池しのばずのいけのほとりを歩いて行く時、私は一歩々々に
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「世界中何處へ行つても此樣こんな往來は見られますまい。」
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)