月番つきばん)” の例文
遠藤は公用人畑佐秋之助はたさあきのすけに命じて、玉造組与力で月番つきばん同心支配をしてゐる坂本鉉之助げんのすけ上屋敷かみやしきに呼び出した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかし其の申渡し書には御老中お月番つきばんの御印形がすわらなければ、切腹させる訳にはまいりませぬ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
りやう以上いじやう盜賊たうぞくでなくても、くびつながらなかつた。死刑しけい連日れんじつおこなはれた。れが月番つきばんときは、江戸えどなら淺右衞門あさゑもんともいふべき首斬くびきやくやいばに、らぬとてはなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
月番つきばん南町奉行所みなみまちぶぎょうしょでも躍気となって、隠密廻おんみつまわり常廻じょうまわりはもとよりのこと、目明めあかし、したぴきを駆りもよおし、髪結床かみゆいどこ、風呂屋、芝居小屋、人集ひとより場、盛り場に抜目なく入り込ませ
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「は。そのお町奉行が、只今、ご承知のとおり、御評定所の月番つきばんにあたっており、また柳営りゅうえいお目付も兼役しておりますので、ほとんど、町方の事件はてまえが任されております」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
月番つきばんになっては、慰兵会費を一銭ずつ集めて廻って、自身役場に持参じさんした。村の耶蘇教会にも日曜毎にちようごとに参詣して、彼が村入して程なくまねかれて来た耳の遠い牧師の説教せっきょうを聴いた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
月番つきばん町年寄まちどしより立会たちあいの上で、おろおろしている伊豆伍夫婦にお上の一書を渡した。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それより御國許おくにもと飛脚ひきやくとばして、御用ごようこれあり、諸役人しよやくにんども月番つきばんもの一名宛いちめいづゝ殘止のこりとゞまり、其他そのた恩田杢おんだもく同道どうだうにて急々きふ/\出府しゆつぷつかまつるべし、とめいたまひければ、こはそも如何いかなる大事だいじ出來できつらむと
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
直接に猫婆に談判しても容易に埓があくまいと思ったので、月番つきばんの者が家主いえぬしのところへ行って其の事情を訴えて、おまきが素直に猫を追いはらえばよし、さもなければ店立たなだてを食わしてくれと頼んだ。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
請取直樣立歸りて此段委細ゐさいに大岡殿へ申立けるに則ち越前守殿夫は苦々しき事なりとていそぎ御月番つきばんの老中方へ申上られしにより老中方のおほせには吟味中藤五郎藤三郎の兩人はまづせん平助の親類しんるゐ共へあづおきすけ十郎がう右衞門の兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それにきのふの御用日ごようびに、月番つきばん東町ひがしまち奉行所へ立会たちあひつて帰つてからは、奉行堀伊賀守利堅ほりいがのかみとしかたは何かひどく心せはしい様子で、急に西組与力にしぐみよりき吉田勝右衛門かつゑもんを呼び寄せて、長い間密談をした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
じいさんは親切な、物わかりのいい人で、子供の話をまじめに聞いて、月番つきばん西奉行所にしぶぎょうしょのある所を、丁寧に教えてくれた。当時の町奉行は、東が稲垣淡路守種信いながきあわじのかみたねのぶで、西が佐佐又四郎成意ささまたしろうなりむねである。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)