あが)” の例文
空は澄むかぎりな清明を見せて、大路から捲きあがる黄いろいほこりが、いくら高くあがっても、そのあおさに溶け合わないくらいであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぱっとあがった灰神楽はいかぐら、富五郎が蹴った煙草盆を逃げて跳り上った釘抜藤吉、足の開きがそのままかなってお玉が池免許直伝は車返くるまがえしの構え。
織「困ったものじゃアないか、何故なぜ草履を懐へ入れて二階へ上ったのだよ、草履を懐へ入れて上へあがるなどという事があるかえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
決して一直線に付いて居るのでなくって山のうねうねとねくって居るところをめぐり廻って、あるいはあがりあるいはさがって行きますので
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
拳銃、金、銀、金票、食料品、馬車、自動車賃は、どんどんあがった。一挺の拳銃を八百五十八円で売買したものさえある。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
モッフはやがて真先に甲板へ駆けあがって、舵機かじについた。何しろ危険なので、ガルール等もそれぞれ出来るだけの働きをしなければならなかった。
し糸が切れようものなら確かに敷石の上に落ちる。若し糸がほぐれようものならの子はきっと天へあがってしまう。乃公おれは大声立てて人を呼んだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『荒鷲』は重い重い爆撃機のくせに、上へあがる力が戦闘機より強い。神風式偵察機が近づいて行くと、すうっと上空をかけ上って、頭の上から狙射だ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
次にソファー・ベッドの付いている小さい部屋があって、それは階段のあがり場になんの交通もなく、わたしの寝室に通ずるただ一つのドアがあるだけであった。
老婆はふらふらと起ちあがって、顫う手に行灯を持った。青鬼と赤鬼の二疋は、胴を屈めるようにしてあがった。老婆は鬼に近寄られないようにと背後うしろ向きに引きさがった。
地獄の使 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
まるで千も万もの花火を一時につづけて打ち上げるようで、あかや青や黄色やその他種々いろいろの火花が散り乱れて、大空にあがっていましたが、不思議な事にはその轟々ごうごうと鳴る音をじっと聞いていますと
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
気の進まないらしいお島に案内させて、平次は二階へあがりました。
(女将に向つて何か言ひながらあがつて来るお秋の声)
疵だらけのお秋 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
「コレ、正宗クンの名刺だよ。天草商事常務取締役とね。天草物産、天草石炭商事、天草製材、天草ペニシリン、とね。賑やかな名刺だね。アハハ。旅行中だけ通用の名刺だから、ちょッと悲しいね。でもさ、今に追い追い月給もあがるさ」
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そこから少し上にあがったところでロン・ランバという駅がある。その駅に一切蔵経があるということで、その駅へ書物を借りに行くという始末。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
っとも俸給のあがらない人だけれど、何ういうものか、友達に畏敬されているとかと思い込ませて置く必要がある。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あらまア何うもまア図々しいじゃア有りまへんか、あんな高い処にあがって真面目な顔をしてえて上下かみしもを着てえてさ、なんだッて此んな悪党に上下なんぞを
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女が自分の職務しごとにも興味をもっていてくれるらしいので、同僚の姓名なまえを教えたり、やがて給料のあがる話などもした。ときどき新聞を読んでくれることもあった。
フェリシテ (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
氷の流れて来て居る川ですから非常にこごえた。で上にあがってだんだん進んで行こうとするけれどもどうも進めない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
甲「さア何時までべん/\と棄置くのだ、二階へ折助おりすけあがったり下りて来んが、さ、これを何う致すのだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
低声こごえに教えてくれた。カッフェにいた男女が、好奇心ものずきに廊下を覗いているらしい気勢けはいがしたが、彼女が客を連れて階段をあがりかけたときに、どっと笑い声が聞えた。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
みんな歴々れきれきの令嬢を拝領しているから、会社では大威張りです。俸給も早くあがります。我儘が利く次第わけですけれど、家へ帰ると、頭が上りません。雪子さん雪子さんです」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
甲「うん成程、気が付かんだったが、さきあがっていたか、至極どうも御尤ごもっともだからう致そうじゃアないか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
根が小心翼々しょうしんよくよくの小室君だ。その分を内容的にと考えて、毎日の勤務に念を入れた。天晴れの心掛が幹部に通じたのか、上半期のボーナスを当り前に貰った上に、俸給があがった。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「おいチューブッフ、上へあがって様子を見て来い。でなければ……」
紺足袋の塵埃ほこりを払って上へあがる。粂之助は渋茶と共に有合ありあい乾菓子ひがしか何かをそれへ出す。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其の頃のことだから小舟で見舞に堀切の別荘へ来ましたが、幇間たいこもちなぞというと、ごく堅気のうちでは嫌う者ゆえ、正孝は来は来たが、あがっていか悪いか知れませんから、っとのぞいて見ると
と云うから、おみゑはずッと上へあが