日中にっちゅう)” の例文
しかし、その毒蛇も竜も、日中にっちゅう一ばん暑いときに三時間だけ寝ますから、そのときをねらって、こっそりとおりぬければ大丈夫です。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
大体福島県は紙漉の村が多いのでありまして、岩代いわしろの国では伊達だて山舟生やまふにゅう安達あだち郡のかみおよびしもの川崎村や耶麻やま熱塩あつしお村の日中にっちゅう
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
冬、暖気もなく、光もなく、日中にっちゅうもなく、夕方はすぐ朝と接し、霧、薄明り、窓は灰色であって、物のすがたもおぼろである。
私が夢のような薄暗いで見た唐紙の血潮は、彼の頸筋くびすじから一度にほとばしったものと知れました。私は日中にっちゅうの光で明らかにそのあとを再びながめました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まだおまえさんたちは、きたくにかえらないのですか。あのくもをごらんなさい。これからは、だんだんあつくなります。そして、日中にっちゅうたび困難こんなんになりますよ。
小鳥と兄妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
富「手前供を致します、彼処あすこ日中にっちゅうも人は通りませんから、酉刻を打って参り、ふッと提灯を消すのが合図」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だが、今はまだ日中にっちゅうである。西湖の方を眺めると、湖面がキラキラと光っている。屋根の硝子天井の上からは、強い太陽の光線が、部屋中いっぱいにさしこんでいる。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのうち日中にっちゅうでも秋の爽やかな風がかよう頃になりますと、私の家でも虫干しが始まりました。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
そうして以前の日本人の仕事は、屋外のものがもっとも多く、日中にっちゅうも家にいてぜんで食事のできるような人は、男はもとより女や年寄としよりにも、ほんのわずかな数だけであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
唯二反そこらの畑を有つ美的百姓でも、夏秋ははげしく草に攻められる。起きぬけに顔も洗わず露蹴散らして草をとる。日の傾いた夕蔭ゆうかげにとる。取りきれないで、日中にっちゅうにもとる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
富「いゝえ詰らん物で、ほんのしるしで御笑納下さい、大きに冷気になりましたが日中にっちゅうは余程お暑い様で」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その翌日よくじつは、にわかに天気てんきわりました。あさのうちから木枯こがらしがきつのり、日中にっちゅう人通ひとどおりが、えたのです。おじいさんははやくからめてしまいました。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるまがもとは日中にっちゅうというだけの意味であったのを、いつかその中間の食物の名にしたのは、今わたしたちのつかうヒルという言葉も同じことであるが、これだけはまだ久しいあいだ
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これで考えても彼等の礼服なるものは一種の頓珍漢的とんちんかんてき作用さようによって、馬鹿と馬鹿の相談から成立したものだと云う事が分る。それが口惜くやしければ日中にっちゅうでも肩と胸と腕を出していて見るがいい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして、のこったほたるのためにあたらしいくさえてやりました。日中にっちゅうあつかったので、くさかげれてやりました。晩方ばんがたになると、その一ぴきもだいぶよわっていたのです。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
源「へい/\お早うございます、いつも御機嫌よろしゅう、此の節は日中にっちゅうは大層いきれてしのぎ兼ねます、今年のようなきびしい事はございません、うも暑中より酷しいようでございます」
お昼の食事もひるげということになったのは、なんか特別に日中にっちゅうにこのおぜんをこしらえる場合だけに、限ったことだったろうと、わたしは思っているが、のちのち外へ持って行くべんとうまでも
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
主人の内の鼠は、主人の出る学校の生徒のごとく日中にっちゅうでも夜中やちゅうでも乱暴狼藉ろうぜきの練修に余念なく、憫然びんぜんなる主人の夢を驚破きょうはするのを天職のごとく心得ている連中だから、かくのごとく遠慮する訳がない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
文「山中とは申しながら、日中にっちゅう旅人の衣類金銭をぐとは恐ろしい奴だなア」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日中にっちゅうあったかだが、夜になるとやっぱり寒いね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)