推測おしはか)” の例文
「聞きたい。さし当って、美濃の将来は、府中におっても、見とおしがつく。——が、容易に推測おしはかれぬのが、織田の現状じゃ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
Explanationエキスプラネーション示談はなしあい)、とはらを極めてみると、大きに胸が透いた。己れの打解けた心で推測おしはかるゆえ、さほどに難事とも思えない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さなきだに寝難いねがたかりし貫一は、益す気の澄み、心のえ行くに任せて、又いたづらにとやかくと、彼等の身上みのうへ推測おしはかり推測り思回おもひめぐらすの外はあらず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其処そこの道理を推測おしはかって見ますと、尊公の腹立ふくりゅう致さるゝ処は至極何うも是は沈黙千万たるの理合りあいにあらずんば有るべからず
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
雁坂の路は後北条氏頃には往来絶えざりしところにて、秩父と甲斐の武田氏との関係浅からざりしに考うるも、はなはだ行き通いし難からざりし路なりしこと推測おしはからる。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そうして馬の背の上に、梅鉢の紋らしいのが見えるところによって見れば、これは、やはりこの街道の神様である加州家にちなみのある荷馬にうまであることも推測おしはかられます。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
文人としての二葉亭の位置の如何なるやは暫らく世間の判断に任すとしても明治の文壇に類の少ない飛離れた人物であったはこの白描のデッサンを見てもおおよそ推測おしはかられよう。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかしてみづかべんじてはるゝは、作者さくしや趣意しゆいは、殺人犯さつじんはんおかしたる人物じんぶつは、その犯後はんごいかなる思想しそういだくやらんとこゝろもちひて推測おしはか精微せいびじよううつして己が才力を著はさんとするのみと。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
噴掛ふきかけし霧の下なるこの演説、巨勢は何事ともわきまへねど、時の絵画をいやしめたる、諷刺ふうしならむとのみは推測おしはかりて、そのおもてを打仰ぐに、女神バワリアに似たりとおもひし威厳少しもくづれず
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
風体ふうていによりて夫々それ/″\の身の上を推測おしはかるに、れいるがごとくなればこゝろはなはいそがはしけれど南無なむ大慈たいじ大悲たいひのこれほどなる消遣なぐさみのありとはおぼえず無縁むえん有縁うえんの物語を作りひとひそかにほゝゑまれたる事にそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
放埒ほうらつだけならまだしも助かるが、殊更ことさら、幕府の忌諱ききに触れるような所行ばかりする。政道に不平を抱いているかのように推測おしはかられ、幕府の諸侯取潰とりつぶしの政策に口実を与えるような危険な状態になった。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
馬琴に対して余り好感を持つものがなかったのは推測おしはかられる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)