捕虜ほりょ)” の例文
「しようがないね、その敵のため、ぼくたちははじめから捕虜ほりょになってしまって……おや、へんだね、足許あしもとがゆらいでいるじゃないか」
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
れは夫れとして、扨松木に五代と云うものは捕虜ほりょでもなければ御客おきゃくでもない、何しろ英の軍艦に乗込んで横浜に来たにちがいはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼らは退却するために、風と従者とから退却を許されるのを待ち受けた。なぜなら、彼らは風と従者との捕虜ほりょとなっていたから。
どこへ着陸しても、ちゃんとドイツ兵の一隊が待ちかまえていて、操縦士と同乗者はただちに射殺、飛行機は捕虜ほりょ、帰ってこないわけだ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
僕はこの仙台のまちを散歩している捕虜ほりょの表情に注意していますが、あの人たちは、あまり笑いません。何か希望を持っている証拠です。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かれらはどこに去ったか、いつまた、襲来しゅうらいするか、これを知るには、捕虜ほりょとせるホーベスに聞くよりほかないと、四名は洞にひきあげた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
小さな小さな猿のくせに、軍服などを着て、手帳まで出して、人間をさも捕虜ほりょか何かのようにあつかうのです。楢夫が申しました。
さるのこしかけ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
敵の捕虜ほりょが、匈奴軍の強いのは、漢からくだった将軍が常々兵を練り軍略を授けてもって漢軍に備えさせているからだと言ったというのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その刀がひらりと動いたかと思うと、一人の捕虜ほりょなわが、ぱらりとたち切れていました。キシさんはおどりたちました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
風車の別荘に罐詰かんづめとされた商策の捕虜ほりょたちは、理平のたくみな歓待に日を忘れて、出帆の朝の間際まで、完全に、二日二晩を、そこで沈酔していた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「名ある大将分たいしょうぶんらしい。捕虜ほりょを引き出して首実検くびじっけんさせて見よ」
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
「でも、口蓋をあけて外に出ると、アメリカ水兵のために、捕虜ほりょみたいな目にあわされるのじゃない? そんなの、いやだなあ」
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのうえ、ある軍隊の前衛にいようが後列にいようが、作者はその軍隊の捕虜ほりょであり、その軍隊の思想の捕虜であった。
「ふらちなことをいう奴だ。よし、奇術をしないというなら、ちょうど、五十人ばかりの捕虜ほりょがきているから、明日の朝、その首きりの役をさせるぞ」
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
日本の国のすみから隅まで占領されて、あたしたちは、ひとり残らず捕虜ほりょなのに、それをまあ、恥かしいとも思わずに、田舎いなかの人たちったら、馬鹿だわねえ
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ところが、この秋、浪華なにわ附近の激戦の折、乱軍の中で、楠木ぜいの手に、捕虜ほりょになったと伝えられた。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元来蘇武は平和の使節として捕虜ほりょ交換のためにつかわされたのである。ところが、その副使某がたまたま匈奴の内紛ないふんに関係したために、使節団全員がとらえられることになってしまった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ともかくも、捕虜ほりょになったなと気がついたときは、今から十日ほど前のことだ。彼はこのショーウインドーの中に長々と伸びていたのだ。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
無気力の状態から奮いたってついに牢獄ろうごくの壁をくつがえすことを、この美しい捕虜ほりょにできさしてやりたい! 彼はおのれの力をも敵の凡庸ぼんようさをも知らないのだ。
朝早く、キシさんは大きな刀を打ち振り、太郎はピストルをポケットにしのばして、捕虜ほりょの首きり役に出かけました。だけど、捕虜というのは、みな玄王の味方の者です。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
と、興奮している若者もあり、念仏をとなえて、捕虜ほりょのすがたや首桶に眼をそむける尼もある。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日からの胡軍こぐんの攻撃は猛烈を極めた。捕虜ほりょの言の中にあった最後の猛攻というのを始めたのであろう。襲撃は一日に十数回繰返された。手厳てきびしい反撃を加えつつ漢軍は徐々に南に移って行く。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
捕虜ほりょになされその上名誉ある決死隊に御はいりなされたそうですがかねての御気象さもございましょうとかげながら皆々にて御うわさいたして居りましたなお申上ぐるまでもなく今後共に御身体からだ
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「どうだね、セン。君は、捕虜ほりょとして土木工事場どぼくこうじばで、まっ黒になって働きたいか、それとも、この工場で、見習技師みならいぎしとして、楽に暮したいか」
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何か思出そうとしながら、どうしても思出せないらしく、いらいらしている様子がはっきり見える。埃及軍の捕虜ほりょ共が陣中じんちゅうに引張られて来た時、その中のある者の話している言葉がかれの耳に入った。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その魂胆こんたんが気になって仕方がない。だが解けなかった。で、とうとう部下に命じて、かねて捕虜ほりょ檻車かんしゃへ放り込んでいた囚人めしゅうど張横ちようおうげん小七とを引っぱり出させ、宋江の人となりを問いただしてみた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
客の方では差閊えないどころかもう半分気が変になっている。だから桜ン坊の捕虜ほりょになって、円タクを拾うと、例の女の家の方面へ飛ぶのだ。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「こいつは、中国人——いや、日本人の密偵にちがいありません。この戦車の中に、しのびこんでいたので、自分が捕虜ほりょとなしたものであります」
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてそれは、今、月世界において、怪人群のため捕虜ほりょになっている風間三郎少年や、木曾九万一少年の身の上と、どんな関係があるのであろうか。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「もうわかった。君は、余を、不名誉きわまる捕虜ほりょとしたうえ、東洋流の、ざんこくなる刑にかけようというのだな」
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いいや、ほっておきなさい。よけいなおせっかいをすると、ガン人はよろこばないのだ。われわれは捕虜ほりょなんだから、ひかえていなくてはならない」
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ねえ、時計屋敷の中で、北岸のおじさんなんかが、幽霊につかまって、捕虜ほりょになってしまったというけれど、おかしいじゃないか。そんなことが信じられるかい」
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
潜水艇の口蓋ハッチをとじて、四人をあべこべに捕虜ほりょにしてしまうつもりでありました。
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こんなところへ来て、われわれが捕虜ほりょ奴隷どれいのようになるのはいやなことです
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところが、サミユル博士一行の六十名をのせた『宇宙の女王』号の消息はまったくわからず、テッド隊は不安のうちにも捜査をつづけているうちに、怪星ガンの捕虜ほりょとなってしまったわけだ。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
博士の行方ゆくえが判ると一番よいのだが、とにかく様子はこの少年の話で判ったから、一つ皆で天文学者谷村博士てい捜査そうさし、一人でもよいからその訳のわからぬ生物を捕虜ほりょにするのが急務きゅうむである。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
捕虜ほりょになった敵は、みなで三十人ばかり。その多くは怪我けがをしていた。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
外国の小説には、火星人が地球の人間を捕虜ほりょにし、その皮をいで自分がスッポリ被り、人間らしく仮装して吾れ等の社会にまぎれこんでくるのがある。しかしあの婦人の顔面かお滅茶滅茶めちゃめちゃだった筈だ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
千二は、いつの間にか、彼が捕虜ほりょになっていることに気がついた。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(これは一大事。うぬ、先生たちを捕虜ほりょにされてたまるものかい)
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
怪物の捕虜ほりょになったクーパー事務長は、もう観念した。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、捕虜ほりょになるのは困る」
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
地下工場ちかこうじょう捕虜ほりょ
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)