抱起だきおこ)” の例文
見て呵々から/\と打笑ひ扨も能氣味哉よききみかな惡漢共わるものども逃失にげうせたりと云つゝ半四郎のそばに立寄是々氣をたしかに持れよと抱起だきおこして懷中の氣付を與へ清水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
抱起だきおこして「これ、俯向うつむき轉倒ころばしゃったな? いま一段もっと怜悧者りこうものにならッしゃると、仰向あふむけ轉倒ころばっしゃらう、なァ、いと?」とふとな
と平野氏は見るなり其場へ立竦たちすくんだが、祐吉はさすが医学生だけに、直ぐ走寄って抱起だきおこした。すると男は、息も絶え絶えに
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
抱起だきおこされるとまばゆいばかりの昼であつた。母親も帰つて居た。抱起したのは昨夜ゆうべのお辻で、高島田も其まゝ、や朝の化粧けわいもしたか、水のる美しさ。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五六歩行くと、彼はつまずいた。見ると、足許あしもとに木乃伊がころがっている。彼は、またほとんど何の考えもなしにその木乃伊を抱起だきおこして、神像の台に立掛たてかけた。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ちゝ一昨年をとゝしうせたるときも、はゝ去年きよねんうせたるときも、こゝろからの介抱かいはうよるおびたまはず、るとてはで、がへるとては抱起だきおこしつ、三月みつきにあまる看病かんびやう人手ひとでにかけじと思召おぼしめしのうれしさ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
えりに手をかけて抱起だきおこすと、なさけないかな下にあったのはすさを切る押切おしきりと云うもの、是は畳屋さんの庖丁を仰向あおむけにした様な実にく切れるものでございますが、此の上へお園の乗った事を知らずに
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし新田進はぐに走寄はしりより、うめいている吉井を抱起だきおこして傷口をしらべた。白い上衣うわぎの胸まで、絞るほどの血だ。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
片手に洗髪あらいがみを握りながら走り寄りて、女の児を抱起だきおこして「危いねえ。」といたわる時、はじめてわっと泣出だせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父の一昨年おとゝしうせたる時も、母の去年うせたる時も、心からの介抱にるも帯を解き給はず、き入るとては背をで、がへるとては抱起だきおこしつ、三月みつきにあまる看病を人手ひとでにかけじとおぼめしうれしさ
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と無理に抱起だきおこして見ましたが、もう事が切れて居る。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)