折助おりすけ)” の例文
折助おりすけやお店者や飴しゃぶりの子守り女やおいらん衆が読むのだからと絶えず自分に言い聞かせても、どうしてもその読者の正体が
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
折助おりすけとも人足にんそくともわからない中年の、ふうていのよくない男が二人、穴のある傘をさして、なにかくち早に話しながら、通りすぎていった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そんな言葉は御維新前ごいっしんまえ折助おりすけ雲助くもすけ三助さんすけの専門的知識に属していたそうだが、二十世紀になってから教育ある君子の学ぶ唯一の言語であるそうだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「紅や半襟を、折助おりすけや仲間が持っていちゃ悪いのかえ、——夜鷹よたか白首しらくびにやるんじゃねえ、十六になる妹に持って行ってやるつもりで買っておいたんだ」
などと、お茶っ葉の提灯ちょうちんを持つ折助おりすけの若いのがいう。名優を随喜渇仰ずいきかつごうするもろもろの声を聞き流して、道庵主従はこの盛り場から町筋をうろつきました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おまえ達が武家に奉公すると云えば先ず中間ちゅうげんだが、あんな折助おりすけの仲間にはいってどうする。奉公をするならば、堅気の商人あきんどの店へはいって辛抱しろと云う。
甲「さア何時までべん/\と棄置くのだ、二階へ折助おりすけあがったり下りて来んが、さ、これを何う致すのだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ここに集まるのは、近所の折助おりすけだの、駄菓子屋の亭主だの、馬方だの、自身番の番太郎までが入っている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
橋際に、小さな夜明しの居酒屋——この辺に、夜鷹をあさりにくる、折助おりすけどもを目当ての、とぼし気な店だ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
武士、町人、鳶ノ者、折助おりすけ婢女げじょ田舎者おのぼりさん、職人から医者、野幇間のだいこ芸者はおり、茶屋女、女房子供——あらゆる社会うきよの人々が、忙しそうに又長閑のどかそうに、往くさ来るさしているではないか。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
初めは行き暮れた旅人を泊らしては路銀をぬすむ悪猟師の女房、次にはよめいびりの猫化郷士ねこばけごうしの妻、三転して追剥おいはぎの女房の女按摩となり、最後に折助おりすけかかあとなって亭主と馴れ合いに賊を働く夜鷹よたかとなり
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
雑草のなかで近所の折助おりすけが相撲をとったり、お正月には子供がたこをあげたりするほか、ふだんはなんとなく淋しい場所だった。
おごそかに言い渡しているのは意外にも先日、甲府の旗亭で、神尾主膳と酒を飲んでいた折助おりすけの権六でありました。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二年前まで折助おりすけをしていて、打つ、飲む、買うの三道楽に身がおさまらず、さんざん一家を手こずらせたあとで、主家に毒口を叩いて出ていった、弁公という若者が、つい
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
運動が出来んのである、運動をする時間がないのである、余裕がないのだと鑑定される。昔は運動したものが折助おりすけと笑われたごとく、今では運動をせぬ者が下等と見做みなされている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
折助おりすけか」と、半七はうなずいた。「折助なんぞは軍鶏屋のお客だ。まんざら縁のねえこともねえ。これでどうにか白と黒の石が揃ったようだ。まあ、おめえの五目ごもくならべをやってみろ」
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ほうきと打水で、役宅の前を掃除していた菖蒲革しょうぶがわはかまと、尻はしょりの折助おりすけ
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両国広小路ひろこうじあたりの裏とか、河岸の水茶屋のあいだなどに、川人足や折助おりすけたち相手の荒っぽい居酒屋があるのだが、慣れない者にはわかりにくく、栄二もそれらの店の前を気づかずに通りすぎ
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
夜鷹がその家へ集まるので、当然に嫖客ひょうきゃくが集まって来る。その嫖客たるや大変物で、折助おりすけや船頭や紙屑買いや、座頭や下職や臥煙がえんなどで最下等の部に属している、そういったような人間どもであった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「往来で裸になれるかい、折助おりすけやがえんじゃあるまいし」
わあッと人浪が崩れ立ったと見れば、へべれけに酔っぱらった何家かの折助おりすけが四、五人づれ、女をみかけしだいにふざけ散らして来るのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お茶を飲むところを笠の下から見ると、この仲間体の男は、折助おりすけにしては惜しいほどの人柄に見えました。
法被姿はっぴすがた梵天帯ぼんてんおび、お約束の木刀こそなけれ、一眼で知れる渡り部屋の中間奉公、俗に言う折助おりすけ年齢としの頃なら二十七、八という腕節の強そうなのが
時時折助おりすけを引っぱって桜町さくらちょうへ飲みに来たり、こっそりと柳町やなぎちょうへ遊びに出たりするくらいのことで、毎日おもしろくもない甲州の山ばかりをにらめて暮らしていましたが
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この柳生の上屋敷の前は、各大名の使者にくっついてきた供の者、仲間ちゅうげん折助おりすけたちで押すな押すなの混雑。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
米友はその夥しい後詰ごづめを見ると、直ちに、これは「折助おりすけだな」と感じました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
油を浮かべたような菊屋橋きくやばしの堀割りへ差しかかったとき、女は駕籠のれを上げて背後うしろを見た。と、あの執念深い折助おりすけが、木刀を前半に押えて、とっとと駈けてくる。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これは昨夜の折助おりすけ狼藉ろうぜきと女軽業の美人連の遭難、その血のあとというのはムク犬の勇猛なる働きの名残なごりであることは申すまでもありませんが、その風聞ふうぶんは兵馬の耳へはまだ入っていませんでした。
まだ早いのかおそいのか、どこかで寺の鐘でも鳴らないか——と、大迫玄蕃が耳をすますと、台所で洗い物をする音がかすかに聞えて、折助おりすけどもの笑い声もするようだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのうちに容貌望きりょうのぞみでたま輿こしというようなこともないとは限らないから、くだらないものにひっかからないように。口上言いや折助おりすけなんぞが、いくら色目を使っても、白い歯は見せちゃいけないよ。
いつものように、宵闇にまぎれて、折助おりすけすがたにつくった辰馬が、ぼんやりっていた。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)