手活ていけ)” の例文
とゞまりしと雖も小夜衣の事を思ひきりしに非ず只々たゞ/\便たよりをせざるのみにて我此家の相續をなさば是非ともかれ早々さう/\身請みうけなし手活ていけの花とながめんものを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大将の近藤なんぞも、島原から綺麗きれいなのを引っこぬいて、あちらこちらへ手活ていけの花としてかこって置くというじゃがあせんか、うまくやってやがら
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
上方一と言われた女も、手活ていけの花としてながめると、三日てばしおれる。いまじゃ、長屋の、かかになって、ひとつき風呂ふろへ行かなくても平気でいる。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
手に一条ひとすじ大身おおみやりひっさげて、背負しょった女房が死骸でなくば、死人の山をきずくはず、無理に手活ていけの花にした、申訳もうしわけとむらいに、医王山の美女ヶ原、花の中にうずめて帰る。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって、黙って見ていたんじゃあ、おれが行かなくても婆さんなり誰かなりが出かけて話をまとめ、ことによったら鈴川様はお艶坊を手活ていけの花と眺めるかも知れない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
が、それわば深窓しんそうかざ手活ていけはなみことのおくつろぎになられたおりかるいお相手あいてにはなりても、いざ生命懸いのちがけのそとのお仕事しごとにかかられるときには、きまりって橘姫たちばなひめにおこえがかかる。
づれば幸ひにその金力にりて勢を得、こびを買ひて、一時の慾をほしいままにし、其処そこには楽むとも知らず楽み、苦むとも知らず苦みつつ宮がむなし色香いろかおぼれて、内にはかかる美きものを手活ていけの花となが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
聞より此方の庄兵衞は今迄手活ていけの花とのみ思ひゐたりし女をば他へ取るゝ無益しさ如何はせんと取置とつおいむねくだき寢食しんしよくも忘るゝ計に考へしが不※ふと思ひ附きお光を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
公子 (聞きつつ莞爾かんじとす)やあ、(女房に)……この女はえらいぞ! はじめから歎いておらん、慰めすかす要はない。私はしおらしい。あわれな花を手活ていけにしてながめようと思った。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
阪地かみがたは風流だね、洒落に芸者に出すなんざ、悟ったもんですぜ、根こぎで手活ていけにした花を、人助けのため拝ませる、という寸法だろう。私なんぞも、おかげで土産にありついたという訳だ。」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)