たわ)” の例文
旧字:
橋際に着けた梅見帰りひょんなことから俊雄冬吉は離れられぬ縁の糸巻き来るは呼ぶはの逢瀬繁く姉じゃおととじゃのたわぶれが
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
みんな慈愛を持っているのに、其方そち一人がうつろな心でたわけながらに世を渡ったのじゃという事をしかと胸に覚えるがい。
ある時たわむれにこう云ってからは、長者の家の者達は、それ以来白髯の老武士を「白髯の殿」と呼ぶようになり
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たはわざなせそ」は、たわわざをするな、巫山戯ふざけたまねをするな、というので、「うちしなりてぞ妹は、たはれてありける」(巻九・一七三八)の例がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
なんということもなくたわむれにたわむれていた手をパッと放すと、ふたりとも真赤になって迎えました。
しかし衣食のために活動しているのではない。娯楽のために活動している。胡蝶こちょうの花にたわむるるがごとく、浮藻うきもさざなみなびくがごとく、実用以上の活動を示している。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
沙弥文覚しゃみもんがくうやまって、路傍の大衆だいしゅに申す。それ、いますがたを見るに、雲上の月は、絶えまなく政権まつりの争奪と、逸楽の妖雲にたわむれ下天げてんの草々は、野望の武士の弓矢をつつむ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おいこら、馬鹿なことをいうな!そんなたわけたことをいってもしようがないじゃないか。」
しばしなりとも下界にりて暖かそうな日の光に浴したしなどたわむれをいいしことありたり、実に山頂は風常に強くして、ほとんど寧日ねいじつなかりしなり、しかれども諸般しょはんことやや整理して
かつては華やかなりし后妃達が遊びたわむれていた宮殿、月夜に憂さをわすれ、釣に一時の心を慰めたことのある広大な庭園、また日夜管絃の宴にうつつを忘れて騒いだ大臣、公卿、殿上人の邸宅
かの時は華美はでから野暮じみへと感染かぶれたが、このたびは、その反対で、野暮の上塗が次第にげてようや木地きじ華美はでに戻る。両人とも顔を合わせれば、ただたわぶれるばかり、落着いて談話はなしなどした事更に無し。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お登和嬢もまた大原にたわむるる心あり
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
遊戯なるが故に絶体絶命の時には必ず姿を隠す。愛にたわむるる余裕のある人は至幸である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それは、てめえの姉にけ。おれは、お八重のこびに釣られて来たまでのたわ
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)