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ひょうかん
ふりがな文庫
“
慓悍
(
ひょうかん
)” の例文
この辺に住んでおりますのが
慓悍
(
ひょうかん
)
な信州人でして、その職業には、牧馬、耕作、
杣
(
そま
)
、炭焼——わけても牧馬には熱心な人民です。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何病気で死んだんだろう? あの頑丈な男が……眼玉のギョロリとした、色の真っ黒い、
慓悍
(
ひょうかん
)
そのもののような骨格であったあの男が……
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「
三毛
(
みけ
)
」に交際を求めて来る
男猫
(
おとこねこ
)
が数匹ある中に、額に
白斑
(
しろぶち
)
のある黒猫で、からだの小さいくせに恐ろしく
慓悍
(
ひょうかん
)
なのがいる。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その上、選抜した
慓悍
(
ひょうかん
)
な黒潮騎士の精鋭
等
(
ども
)
に、長槍をもって
四辺
(
あたり
)
を払わせて通るのです。得意思うべしではないのですか。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
制止
(
せいし
)
する
目付役
(
めつけやく
)
をふりもぎって、とつぜん、かれのうしろ姿を追いかけた
慓悍
(
ひょうかん
)
なる男があった。——これ
祇園藤次
(
ぎおんとうじ
)
だった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
顔を見ると、昔から
慓悍
(
ひょうかん
)
の
相
(
そう
)
があったのだが、その慓悍が今蒙古と新しい関係がついたため、すこぶる活躍している。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その上彼の縄を解くと、ほとんど手足も
利
(
き
)
かない彼へ、手ん手に石を投げつけたり、
慓悍
(
ひょうかん
)
な狩犬をけしかけたりした。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それより先日没後に、ブラーエはオーヘム大佐に従いて、戦闘最も激烈なりし四風車地点を巡察の途中、彼の
慓悍
(
ひょうかん
)
なる狙撃の的となりし者を指摘す。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
驚いた私の前へ、続いて現れたのは、ガッチリ
捕縄
(
ほじょう
)
を掛けられた、船員らしい色の黒い
何処
(
どこ
)
となく凄味のある
慓悍
(
ひょうかん
)
な青年だ。二人の警官に
護
(
まも
)
られている。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
如何に
慓悍
(
ひょうかん
)
狂暴な性格に変化するものかという事実は、普通人のチョッと想像の及ばないところでしょう。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その向うの各国の汽船のぎっしり身をせばめて並んでいる中に今やこれから日本へ帰ろうとする香取丸が、
慓悍
(
ひょうかん
)
な黒い小さな船尾だけ覗かせ煙を吐いて泊っていた。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
炎の
一瞥
(
いちべつ
)
、
鷲
(
わし
)
のごとき目つきと雷電のごとき打撃とのいい知れぬある物、
傲然
(
ごうぜん
)
たる
慓悍
(
ひょうかん
)
さのうちにおける驚くべき技能、深奥なる魂のあらゆる不可思議、運命との連結
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
(
踊
(
おど
)
りはねるも三十がしまいって、さ。あんまりじさまの
浮
(
う
)
かれだのも見だぐなぃもんさ。)むっとしたような
慓悍
(
ひょうかん
)
な三十台の男の声がした。そしてしばらくしんとした。
泉ある家
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
オンドリは、始めの
慓悍
(
ひょうかん
)
さをだんだんと失ってきて、次第にむずかしい顔付をするようになった。九回目には、彼は大きな恐怖の色をうかべて、死んだようになってしまった。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は
慓悍
(
ひょうかん
)
の公卿
大原重徳
(
おおはらしげとみ
)
を
慫慂
(
しょうよう
)
して、長州に下向せしめんとせり。その意大原を以て藩主を要し、藩論を一定し、以て勤王軍の首唱たらしむるにありし。その書中の一節に曰く
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
若鮎
(
さあゆ
)
はあの秋の雁のように正しく、可愛げな行列をつくって上ってくるのが例になっていた。わずかな人声が水の上に落ちても、この敏感な
慓悍
(
ひょうかん
)
な魚は、花の散るように列を乱すのであった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
さきの御小姓組である安倍誠之助は、ことさら
慓悍
(
ひょうかん
)
げに目をかがやかせ、つんと首を立てた。丁度彼と阿賀妻との間にはいぶる炉火があり、すすけた
自在鍵
(
じざいかぎ
)
には
南部鉄瓶
(
なんぶてつびん
)
が
吊
(
つ
)
りさがっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
気の弱い牛ならば貧血を起こそうという
慓悍
(
ひょうかん
)
無比の猛牛ぞろい、なかにも、マルセーユ代表のヘルキュレスというのは、当年満三歳の血気盛り、相手の
前肢
(
まえあし
)
に角をからみ、とたんにやっ! と
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
先生はまるで
雷
(
らい
)
に
撃
(
う
)
たれたように、口を半ば
開
(
あ
)
けたまま、ストオヴの側へ棒立ちになって、一二分の
間
(
あいだ
)
はただ、その
慓悍
(
ひょうかん
)
な生徒の顔ばかり眺めていた。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それに反して、孫兵衛の
質
(
たち
)
は、
慓悍
(
ひょうかん
)
なる一本気で、計画もなく
衒
(
てら
)
いもなく、本能にまかせて、悪を悪とも思わずに、なんでもやってのけようとする先天的なほうであった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その兇猛な、
慓悍
(
ひょうかん
)
な姿は、もし知らぬ人間が見たら一眼で顫え上がってしまうであろう。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その癖蒼くなって机に
噛
(
かじ
)
りついているのが大嫌いで、暇さえあれば鉄砲を持って熊の足跡をつけ廻していようと云う——日焼のした
赧
(
あか
)
ら顔で、
慓悍
(
ひょうかん
)
な肩をゆすって笑ったりすると
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
軽浮
(
けいふ
)
にして
慓悍
(
ひょうかん
)
なるもの、
慧猾
(
けいかつ
)
にして
狡獪
(
こうかい
)
なるもの、銭を愛するもの、死を恐るるもの、
愧
(
はじ
)
を知らざるもの、即ちハレール、セイーの徒の如きは、以て革命家の器械となるを得べし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼に
刀子
(
とうす
)
を加えようとした、以前の
慓悍
(
ひょうかん
)
な
気色
(
けしき
)
などは、どこを探しても見えなかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
数千羽の烏のように、寒林を横ぎってくる
慓悍
(
ひょうかん
)
なる騎兵があった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山の向うに
穴居
(
けっきょ
)
している、
慓悍
(
ひょうかん
)
の名を得た
侏儒
(
こびと
)
でさえ彼に出合う度毎に、必ず一人ずつは
屍骸
(
しがい
)
になった。彼はその屍骸から奪った武器や、矢先にかけた鳥獣を時々部落へ持って帰った。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これが半農半武士に住みついて、蜂須賀名物の原士となり、軍陣の時は鉄砲二次の槍備えにあてられ、平時の格式は
郷高取
(
ごうたかとり
)
、無論、
謁見
(
えっけん
)
をも
宥
(
ゆる
)
されて、
慓悍
(
ひょうかん
)
なこと、武芸者の多く出ることはその特色。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やはり
禿
(
は
)
げ
鷹
(
たか
)
に似た顔はすっかり頭の白いだけに、令息よりも一層
慓悍
(
ひょうかん
)
である。その次に坐っている大学生は勿論弟に違いあるまい。三番目のは妹にしては
器量
(
きりょう
)
の好過ぎる娘さんである。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
慓
漢検1級
部首:⼼
14画
悍
漢検1級
部首:⼼
10画
“慓悍”で始まる語句
慓悍児
慓悍無双
慓悍無比