得策とくさく)” の例文
どうぞ是非ぜひ一ついていただきたい、とうのは、じつはそうわけであるから、むしろきみ病院びょういんはいられたほう得策とくさくであろうとかんがえたのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それゆゑにかような場合ばあひおいては、屋外おくがいることを斷念だんねん屋内おくないおい比較的ひかくてき安全あんぜん場所ばしよもとめることがむし得策とくさくであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
まだお互に、これから花もも結ぼうという悪党同士だ、そうこわつらをしておらずに、周馬の相談に乗るほうが得策とくさくだろう
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木村とさし向かいになるのが得策とくさくだと思ったので、ほどもなくきまじめな顔つきに返って、まくらの下を探って、そこに入れて置いた古藤の手紙を取り出して木村に渡しながら
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
だからまずあそこへお越しになるのが一番得策とくさくであるといって親切に馬を貸してくれたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いま前後ぜんご事情じじやうよりかんがへ、またきみ人物じんぶつしんずるので、し、きみ確固くわくこたる約束やくそくがあるならば、今日こんにちおいて、この大秘密だいひみつを、きみ明言めいげんしてことの、むし得策とくさくなるをしんずるのです。
其処そこに自然主義の恒久こうきゅうを認識してもらう方が彼らのために得策とくさくではなかろうかと思う。
イズムの功過 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いますこし勉強するにはそりゃもちろん東京へくるほうが得策とくさくだ、位置いちのぞまないというならば、どうとかなるだろう、しかしきみたちのように、まにあわせの学問をした人はみなこまってるらしい
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
決行したほうが得策とくさくのように思えるんだ
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
用心をする方が得策とくさくだと思つた。
何卒どうぞ是非ぜひ一ついていたゞきたい、とふのは、じつ然云さういわけであるから、むしろきみ病院びやうゐんはひられたはう得策とくさくであらうとかんがへたのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『無駄ですぞ、暢々のびのびと身をやすめていたほうが得策とくさくじゃ。上杉家の者が、ほん気になってせてくるつもりなら、何で、この真昼間を選ぶものですか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こののぼりにくい鳥居とりいにかじりついてすべったり落ちたりしているよりは、どこか、そこらに落ちている山県蔦之助やまがたつたのすけをひろっていったほうが、時間においてはるかに得策とくさくだと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「城兵にとっては可憐かれんな女子。そのいじらしき者を、三木川で磔刑にしては、一層、城兵の結束けっそくと決死の気を強めさせるようなものになる。人知れず処置したほうが得策とくさくであろう」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)