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むくいぬ
ふりがな文庫
“
尨犬
(
むくいぬ
)” の例文
大きな
尨犬
(
むくいぬ
)
の「熊」は、
老
(
とし
)
をとった
牝犬
(
めすいぬ
)
だったが、主人の命で、鋭く吠えたてたので
流石
(
さすが
)
の腕白連も、
一
(
ひと
)
たまりもなく逃げてしまった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
而も、その靴が、子供らしい
尨犬
(
むくいぬ
)
のようなのではなく、細く、踵がきっと高く、まるで貴婦人の履き料のような華奢な形のものなのである。
思い出すかずかず
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
両側の店先には大きな
尨犬
(
むくいぬ
)
や、脚の長いほつそりした大犬がごろ/\してゐました。店の人は咡きながら覗き見をしました。
文化村を襲つた子ども
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
料金を計算すると二ルーブルと七十三カペイカになりましたが、その広告というのが、何でも黒毛の
尨犬
(
むくいぬ
)
に逃げられたというだけのことなんで。
鼻
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
万年町の縁の下へ
引越
(
ひっこ
)
すにも、
尨犬
(
むくいぬ
)
に
渡
(
わたり
)
をつけんことにゃあなりませぬ。それが早や出来ませぬ
仕誼
(
しぎ
)
、一刻も猶予ならぬ
立退
(
たちの
)
けでござりましょう。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
彼女は
晩餐
(
ばんさん
)
会に列していた。大公爵もいた。ミルハは
尨犬
(
むくいぬ
)
だった……いや、縮れ毛の羊だった。そして給仕をしていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その時
白楊
(
ポプラア
)
の
並木
(
なみき
)
の根がたに、
尿
(
ねう
)
をしやんだ一頭の犬は、これも
其処
(
そこ
)
へ来かかつた、仲間の
尨犬
(
むくいぬ
)
に話しかけた。
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
月光を浴びて、房々した毛の大きな銀色の
尨犬
(
むくいぬ
)
、その織るやうな早足、それが目まぐるしく彼の目に見える。それは王禅寺といふ山のなかの一軒の寺の犬だつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
背嚢
(
はいのう
)
を
背負
(
しょ
)
って、
尨犬
(
むくいぬ
)
の皮で
拵
(
こしら
)
えたといわれる例の靴を
穿
(
は
)
いたまま、「きっとくれる?」と云いながら、ほとんど平たい幅をもっていない、つるつる
滑
(
すべ
)
りそうな材木を渡り始めた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私はどんなに気取ってみたところで必ず
看破
(
みやぶ
)
られるにきまっている。それこそ、
尨犬
(
むくいぬ
)
の正体見たり小悪魔、ということになり、私は足蹴にされるかも知れない。大学生は鬼門である。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
あの
禿
(
はげ
)
あがったような貧相らしい
頸
(
えり
)
から、いつも耳までかかっている
尨犬
(
むくいぬ
)
のような
髪毛
(
かみのけ
)
や赤い目、
鈍
(
のろ
)
くさい口の
利方
(
ききかた
)
や、卑しげな奴隷根性などが、一緒に育って来た男であるだけに
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ごくやせた一匹の
尨犬
(
むくいぬ
)
が通りかかった。ガヴローシュはそれをかわいそうに思った。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そこでさ、そういう手合に飲み食いをさせるは言わずもがな、ピアノもなくちゃならねえ、安楽椅子の上にゃ
尨犬
(
むくいぬ
)
もいなくちゃならねえ——飛んだお笑い草よ。……一口に言やあ贅沢さ。
追放されて
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
尨犬
(
むくいぬ
)
に化けたメフィストの魔力を破ろうと、あの全能博士が唱える呪文の中にある、勿論その時代を
風靡
(
ふうび
)
した
加勒底亜
(
カルデア
)
五芒星術の一文で、
火精
(
ザラマンダー
)
・
水精
(
ウンディネ
)
・
風精
(
ジルフェ
)
・
地精
(
コボルト
)
の四妖に呼び掛けているんだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
尨犬
(
むくいぬ
)
。じっとしていろ。そんなに往ったり来たりするな。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
わたしは、生きた
尨犬
(
むくいぬ
)
の背中でペンを拭う。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
窓の下に死にゆくやうな
尨犬
(
むくいぬ
)
よ。
メランコリア
(新字旧仮名)
/
三富朽葉
(著)
君が跡ゆく
尨犬
(
むくいぬ
)
の
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
初めは鉛筆の
尖
(
さき
)
で突いたほどの黒い点でしたが、だん/\大きくなつて豆粒ほどになり、
甲虫
(
かぶとむし
)
ほどになり、それから急にムクムクツと
尨犬
(
むくいぬ
)
のやうに大きくなつて
文化村を襲つた子ども
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
「こまつぶり」でも、廻してゐるのかと思つて、後ろから覗いて見ると、
何処
(
どこ
)
かから迷つて来た、
尨犬
(
むくいぬ
)
の首へ繩をつけて、打つたり
殴
(
たた
)
いたりしてゐるのであつた。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そういう青年らがクリストフを取り巻いていた。あたかも、生命にすがりつくために一つの魂へ取りつこうとうかがってる「待ち伏せの
怨霊
(
おんりょう
)
」、ゲーテのいわゆる
尨犬
(
むくいぬ
)
、のようであった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この間もあの
術
(
て
)
で驚かしゃあがった、
尨犬
(
むくいぬ
)
め、しかも真夜中だろうじゃあねえか、トントントンさ、誰方だと聞きゃあ
黙然
(
だんまり
)
で、
蒲団
(
ふとん
)
を
引被
(
ひっかぶ
)
るとトントンだ、誰方だね、
黙
(
だんま
)
りか、またトンか
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「だってみんなが
尨犬
(
むくいぬ
)
の皮だ尨犬の皮だって
揶揄
(
からか
)
うんだもの」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
尨犬
(
むくいぬ
)
です。あいつ等の流義で、御苦労にも1150
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
窓
(
まど
)
の
下
(
した
)
に死にゆくやうな
尨犬
(
むくいぬ
)
よ。
メランコリア
(旧字旧仮名)
/
三富朽葉
(著)
ある日、けたたましく犬の
吠
(
ほ
)
える声がするので、内供が何気なく外へ出て見ると、中童子は、二尺ばかりの木の
片
(
きれ
)
をふりまわして、毛の長い、
痩
(
や
)
せた
尨犬
(
むくいぬ
)
を
逐
(
お
)
いまわしている。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
京童
(
きやうわらべ
)
にさへ「何ぢや。この鼻赤めが」と、罵られてゐる彼である。色のさめた水干に、
指貫
(
さしぬき
)
をつけて、飼主のない
尨犬
(
むくいぬ
)
のやうに、朱雀大路をうろついて歩く、憐む可き、孤独な彼である。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
尨
漢検1級
部首:⼪
7画
犬
常用漢字
小1
部首:⽝
4画
“尨”で始まる語句
尨大
尨毛
尨
尨然
尨躯
尨雑