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大樹
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だいじゆ
かくて
當日は、二十
里近く
進んで
日が
暮れたので、
夜は
鐵車をば
一大樹の
下蔭に
停めて、
終夜篝火を
焚き、
二人宛交代に
眠る
積であつたが、
怒り
叫ぶ
猛獸の
聲に
妨げられて
與吉は
天日を
蔽ふ、
葉の
茂つた
五抱もあらうといふ
幹に
注連繩を
張つた
樟の
大樹の
根に、
恰も
山の
端と
思ふ
處に、しツきりなく
降りかゝる
翠の
葉の
中に、
落ちて
落ち
重なる
葉の
上に
ぞ
籠たりける此所は名に
負周智郡大日山の
續き秋葉山の
絶頂なれば
大樹高木生茂り晝さへ
暗き
木下闇夜は猶さらに月
暗く
森々として
更行樣に如何にも
天魔邪神の
棲巣とも云べき
峯には
猿猴の木傳ふ聲谷には流水
滔々と
而木魂に
響遠寺の
鐘も
最物
凄く遙に聞ば
野路の
狼吼て青嵐
颯々と
梢を
二百年を経たる
橅の
大樹は