売薬ばいやく)” の例文
旧字:賣藥
売薬ばいやくさきりたが立停たちどまつてしきり四辺あたりみまはして様子やうす執念深しふねんぶかなにたくんだか、とこゝろよからずつゞいたが、さてよくると仔細しさいがあるわい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
富山とやまはその首都で、ここも前田一門の居城でありました。しかしそういう殿様のことよりも、富山といいますと、すぐ売薬ばいやくのことが想い起されるでしょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
さう小家こいへまがかどよごれた板目はめには売薬ばいやく易占うらなひの広告にまじつて至るところ女工募集ぢよこうぼしふ貼紙はりがみが目についた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかし、母親ははおや病気びょうきだけは、いまは売薬ばいやくぐらいではなおりそうでなかったのです。
一粒の真珠 (新字新仮名) / 小川未明(著)
僕はお宗さんの髪の毛も何か頭の病気のために薄いのではないかと思つてゐる。お宗さんの使つた毛生え薬は何も売薬ばいやくばかりではない。お宗さんはいつか蝙蝠かうもりの生き血を一面に頭に塗りつけてゐた。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わしいまはなし序開じよびらきをした飛騨ひだ山越やまごえつたときの、ふもと茶屋ちやゝで一しよになつた富山とやま売薬ばいやくといふやつあ、けたいのわるい、ねぢ/\したいや壮佼わかいもので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田舎いなかだって、もうこうした売薬ばいやくは、はやらないだろうとおもいました。
手風琴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひろでもおよかぎり芥子粒けしつぶほどのおほきさの売薬ばいやく姿すがたないで、時々とき/″\けるやうなそらちひさなむし飛歩行とびあるいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)