士族しぞく)” の例文
上野うへの戦争後せんそうご徳川様とくがはさま瓦解ぐわかい相成あひなりましたので、士族しぞくさんがたみな夫々それ/″\御商売ごしやうばいをお始めなすつたが、おれなさらぬからうまくはまゐりませぬ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その家は旧士族しぞくふるい家柄の家であった。そこには帝国文庫だの、それに類した本が十冊近くもあって、それがあこがれの的であった。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
だい四には、国民こくみんだ。士族しぞくはもちろん、ひゃくしょうや町人ちょうにんどもでも、すこしばかり文字もじがわかるやつは、みんな役人やくにんになりたがっている。
大臣の二、三男が家をわかてば必ず小姓組たるの法なれば、必竟ひっきょう大臣も小姓組も同一種の士族しぞくといわざるを得ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もつとも、わたしちゝはじちひさな士族しぞくとして、家屋かをくと、宅地たくちと、周圍しうゐすこしのやまと、金祿公債證書きんろくこうさいしようしよなんゑんかを所有しよいうしてゐたが、わたし家督かとく相續さうぞくしたころには
れいになき子細しさいらしきおきやく呼入よびいれて二かいの六ぢよう三味線さみせんなしのしめやかなる物語ものがたりとしはれてはれて其次そのつぎおやもとの調しらべ、士族しぞくかといへばれははれませぬといふ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにつてる、当時いま事由ゆゑあつて零落おちぶれておでなさるが、以前もと立派りつぱなおかたで、士族しぞくさんだかなんだかれないんだよ、大事だいじにしておげ、陰徳いんとくになるから。
「まあ、おさむらいには、士族しぞくとしての体面たいめん(せけんにたいするていさい)があるからな。それを、あのようにどうどうと……いったい、どこのどもだろう。」
町人ちょうにんたちがはなしている、その少年しょうねんは、じりじりとてりつける太陽たいようにあせばんだのか、ときおり、右手みぎてで、ひたいのあせをふきながら、士族しぞくやしきへかえっていきました。