)” の例文
人力も絶えず徴発せられて争闘の犠牲とならなければならない、生民そのに安んぜずというのが、この近江の国の住民の運命でした
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こと成善しげよしが江戸でもまだ少かった蝙蝠傘かわほりがさを差して出ると、るものがの如くであった。成善は蝙蝠傘と、懐中時計とを持っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これ相州西鎌倉長谷はせ村の片辺かたほとりに壮麗なる西洋館の門前に、今朝より建てる広告標なり。時は三伏さんぷく盛夏の候、あつまり読む者のごとし。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羅馬ろま法王に対し罪の懺悔を呈し、ついに仏王として承認せらるるに至れり、彼の譲退は彼の胸算きょうさんに違わざる結果を生じ、彼の王位は強固となり、国内平穏に帰し民みなけり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さらにこのお祭り騒ぎは、その日、陽穀県ようこくけんの県城へ入っては、いよいよ白熱化されていた。もう町中も聞きつたえており、沿道はをなす人の垣である。武松は変な気持ちだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おゝてえまあ」群集ぐんしふなかから假聲こわいろでいつた。をどりれつ先刻さつきからくづれてごと勘次かんじとおつぎの周圍まはりあつまつたのである。おつぎはこのこゑくとともみだけた衣物きものあはつくろうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
論ずれば聴くもの必ずよろこんでをなす。誰か強いてその利を論ずるの愚をなさんや。然れども害あるものもし用ゆる事宜しければ転じて利となる事無きに非らず。煙草にも徳あり酒にも功あり。
猥褻独問答 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ややに安んぜんとするを、造化はなお生意気なまいきなりと思いしか、たまたさらに予をこころみんとてか、今回は趣向を変えて、極めて陰険なる手段を用いジリジリ静かに攻め来りたり、そは他にあら
寂照が願文がんもんを作って、母の為めに法華ほっけ八講はっこうを山崎の宝寺にしゅし、愈々本朝を辞せんとした時は、法輪さかんに転じて、情界おおいに風立ち、随喜結縁けちえんする群衆ぐんじゅ数を知らず、車馬填咽てんえつして四面を成し
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかれども生がこの過激蛮野の行為を辞せず、一身の汚名をして、微衷を吐露し、あへて一言を薦むるものは、いささか深厚の知遇にむくゆるに外ならず。こひねがはくはこれを諒せよ。門下生某泣血頓首。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
仮屋の周囲には京都の老若男女がごとくに集って見物した。落首の中に「比類なき名をば雲井に揚げおきつやごゑを掛けて追腹おひばらを切る」
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
こうして兇賊が引き立てられ、場面が整理され、群集がに着いた時分、例の高燈籠たかどうろうの下で小さな尼を介抱しているところのお銀様を見ました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
凌雲閣上りょううんかくじょう、天子もみそなわし、衛府えふ以下八省の官人、満都の群集もをなして、花を投げたり爆竹を鳴らしたりした。あわれむべし、ここの庶民は、梁山泊が庶民の味方とは何も知っていない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)