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うわごと
ふりがな文庫
“
囈言
(
うわごと
)” の例文
襖
(
ふすま
)
ごしに聞える朱実の
囈言
(
うわごと
)
は、彼にも多少は
平常
(
ふだん
)
にあった侍の心がまえというものを、まったく泥舟が水へ
浸
(
ひた
)
ったように
覆
(
くつがえ
)
していた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして、ときどき熱の加減か
囈言
(
うわごと
)
のように、「あれ、熊が来た」などと口走るので、家内の者も心配しているとのことであった。
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
目は醒したけれど
囈言
(
うわごと
)
の様な事を云って居る、もはや先刻馬車の馬丁に頼んで遣ったペイトン市の医者が来そうな者だのに未だ来ない。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
レエヌさんは、熱が出てきたのらしく、眉の間に
竪皺
(
たてじわ
)
をよせ、苦しそうにあえぎながら、おぼろな声で
囈言
(
うわごと
)
をいっていた。
キャラコさん:05 鴎
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そうしてその夜は夜通し
囈言
(
うわごと
)
ばかり云っていましたが、時々眼を開いて両親や妹共の顔を見るかと思うと、忽ち狂気のように騒ぎ出しまして——
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
▼ もっと見る
老人は苦しそうに身をもがいて、何か
囈言
(
うわごと
)
のようなことを云いつづけていたが、朝になってぽっくりと死んでしまった。
位牌田
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
囈言
(
うわごと
)
にも今度のその何か済まないことやらも、旦那様に対してお恥かしいことのようでもございますが、
仂
(
はした
)
ない事を。
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「おねえ様なおしてちょうだいよう」とか「苦しい……苦しいからお薬をください」とか「もう熱を計るのはいや」とか時々
囈言
(
うわごと
)
のように言っては
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
間もなく夫の病気、大熱が続いたので、お父さんの事や、私の事や、随分いろいろと
囈言
(
うわごと
)
見たいな事を云った。
愛の為めに
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そして折竹は、
猓玀
(
ローロー
)
の人夫の背に負われて、
Zwagri
(
ツワグリ
)
、
九十九江源地
(
ナブナテイヨ・ラハード
)
と
囈言
(
うわごと
)
を言いながら魔境をでた。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その前後から、
烈
(
はげ
)
しい高熱に襲われ初めた瑠璃子は、取りとめもない
囈言
(
うわごと
)
を
云
(
い
)
いつゞけた。その囈言の中にも、美奈子は、母が直也と呼ぶのを幾度となく聴いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「叔父さんに急いで来てもらうように、電話でそう言ってね……。」と、患者は
囈言
(
うわごと
)
のように
呟
(
つぶや
)
いた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そうかと思うと訳のわからない
囈言
(
うわごと
)
のような調子で叫び出して、
其処
(
そこ
)
らじゅう掻き掴むようながりがりした音を立てた。男の動悸は極度の不安と激しい乱打とに湧き立った。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
煎じるのじゃが——その間に、顔だけ見るがよい。未だ
囈言
(
うわごと
)
をいって、正気づいておらん
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
染奴は、泣きじゃくりながら、
囈言
(
うわごと
)
のように、そんなことを口走るばかりである。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
と米友の代りにお松が返事をしたけれど、お君の呼んだのは
囈言
(
うわごと
)
でありました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
旅の空で困つた時、親知らず子に遣つた。生死共に分らぬ娘、打遣つておいてくれ、逢ひたいとも思はぬと、ただ一口にいひ消せど。熱が嵩じた
囈言
(
うわごと
)
には、またしてもお清お清といひ続け。
移民学園
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
実はそんじょそこらのお人の悪い御仁にツイそそのかされて、例のおッちょこちょいから、とんだ
囈言
(
うわごと
)
までもかくの如しという始末、まァ長え眼でごろうじて下せいと、あなかしこあなかしこ
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
女中の方は可なりの重態で昏睡を続けているし、殿村夫人も別段傷はうけていなかったけれど、恐怖のあまり熱病やみのようになって、
囈言
(
うわごと
)
などを口走る有様で、なんのたよりにもならなかった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
豊姉は夢中の状態で
囈言
(
うわごと
)
を言った。まわりには皆がとり巻いていた。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
と、京野等志はこの
囈言
(
うわごと
)
のように喋りつゞける彼女をさえぎつた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
彼の病床での
囈言
(
うわごと
)
は凄惨であつた。
長島の死
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
うつつにまで、昼の悪夢におびやかされているのであろう、朱実の、さけびが、
囈言
(
うわごと
)
とも思えないほど、生々しい
呪
(
のろ
)
いをおびて響いた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生憎
囈言
(
うわごと
)
の外に何にも云わず、問うたとて仕方がない、若しや婆さん、お前に何か云わなんだか、甚蔵がアノ美人の事に就いてさ
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
……ひと心地もないうちにも、毎年、お氷を頂戴したことをおぼえていると見えまして、四五日前から口をおかずに、お氷、お雪と
囈言
(
うわごと
)
を申します。
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それから……それから(ここで葉子は何がなしに涙ぐましくなった)もしわたしが
囈言
(
うわごと
)
のような事でもいいかけたら、お前に一生のお願いだからね
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そうして固く握り詰めた左手の拳を千切れるばかりにふりまわしながら、
囈言
(
うわごと
)
のように切れ切れに——
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
橋場
(
はしば
)
の親類の
家
(
うち
)
にいるじゃあねえか。熊が出るなんて詰まらねえ
囈言
(
うわごと
)
を云って、娘はもう一度橋場へやって貰おうという算段だろう。火事が取り持つ縁とは、とんだ八百屋お七だ。
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或る夜、神尾主膳は
囈言
(
うわごと
)
のように、枕許にいた福村を呼んでこう言いました
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
青ざめた森新之助は、
囈言
(
うわごと
)
のように、その言葉ばかり、呟いている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
きびしく、そこの武者たちに、左右から腕を組まれて、暗い道を行くあいだも、飛脚の男は、のべつ、
囈言
(
うわごと
)
みたいに、さけび続けていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さっきのおだやかな表情はなくなって、
劇
(
はげ
)
しい不安と恐怖でひき歪んだ顔で、
囈言
(
うわごと
)
のように叫びつづけるのだった。
キャラコさん:11 新しき出発
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
しかしその手紙をつやに渡そうとする段になると、葉子には思いもかけぬ
躊躇
(
ちゅうちょ
)
が来た。もし手術中にはしたない
囈言
(
うわごと
)
でもいってそれを愛子に聞かれたら。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
囈言
(
うわごと
)
か何か云ったのじゃないかしらん……なぞと一瞬間に考えまわしながら、独りで赤面していると、その眼の前で、青木はツルリと顔を撫でまわして、黄色い歯を一パイに
剥
(
む
)
き出して見せた。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
老練の船頭すらもまだそれを発見し得ない間に、かれがどうして
逸早
(
いちはや
)
くそれを予覚したのであろうか。はじめは気ちがいの
囈言
(
うわごと
)
ぐらいに聞きながしていた彼の警告が一々図星にあたっていたのである。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
林助は、熱で真赤になりながら、
囈言
(
うわごと
)
のように、妻の名を呼んだ。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
がんりきは引続いて
囈言
(
うわごと
)
ばかり言っています。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一夜に、
痩
(
や
)
せ衰えた舞姫は、その夜から
囈言
(
うわごと
)
に、子と良人のことばかり云いつづけて、夏の中も病の
床
(
とこ
)
から起てなかった。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐ろしものがすぐそばにでもいるように、取りとめのない
囈言
(
うわごと
)
をいいながら、つかみかかるような身振りをする。
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
海鳴りと松かぜに暮れてゆく障子のうちに、
朱実
(
あけみ
)
はうつらうつら
昏睡
(
こんすい
)
していた。枕を当てがわれると急に発熱して、頻りとそれからは
囈言
(
うわごと
)
をいう。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえ、それが恍惚のときの狂熱の叫びであろうと有頂天の間の
囈言
(
うわごと
)
であろうと、かりにも、じぶんの耳が聞いたその言葉を、なぜ、そのままに信じられないのか。
墓地展望亭
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「それでは今のは
囈言
(
うわごと
)
か……一八郎の死をひどく気にされていたところへ、妙にきょうは悪い偶然が重なったので、まだ昼の地震にゆられておいでになるとみえる」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、絶えず
囈言
(
うわごと
)
をいう。すると、そのたびに、沼間夫人はハンカチを絞るほどの涙を流し
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と、彼の男泣きに呟やく声が、時々
囈言
(
うわごと
)
のようにそこから洩れた。ある時は狂者のようになって。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ともかく、病院へお連れしましょう。このまま、私がそっと抱えて行きます。だいぶ
囈言
(
うわごと
)
を
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お延はそう云って、しどけなく酔った女の
囈言
(
うわごと
)
のように、肱つき窓へ
俯伏
(
うっぷ
)
して叫んだ。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
囈言
(
うわごと
)
のように口走りながら、旋風のように駈け出した。
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
時々微かに
囈言
(
うわごと
)
を洩らすのである。囈言はかならずおっ母さんと呼ぶらしかった。そのたびに母は浜子を抱いて
慟哭
(
どうこく
)
した。そして、すやすやとそのまま亡くなってしまったのである。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ありがとう。……ああ、あなたじゃったか、なにか、わしは
囈言
(
うわごと
)
をいうたかの」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金吾の
囈言
(
うわごと
)
を聞けば聞くほど、かの女の甘い毒薬は少しずつ朝夕の
粥
(
かゆ
)
に増されて、春は来ても梅は咲いても、相良金吾、
聖天
(
しょうでん
)
の
洞窟
(
どうくつ
)
よりはさらに
無明
(
むみょう
)
な妖婦の愛のとりことなって、今は
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
囈
漢検1級
部首:⼝
21画
言
常用漢字
小2
部首:⾔
7画
“囈”で始まる語句
囈語
囈
囈口