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唆
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そそのか
ふりがな文庫
“
唆
(
そそのか
)” の例文
間もなくおすぎは芳三に
唆
(
そそのか
)
されて叔父の家を出た。ひとつは同年輩の従姉妹との間がうまく行かなくて叔父の家も居辛かったのである。
夕張の宿
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「白々しいこと、えい、申すな! 主人の姫を
唆
(
そそのか
)
し、人もあろうに
仇敵
(
かたき
)
の子と、不義
三昧
(
ざんまい
)
に落ち入らせた事、罪に非ずと抗弁するか!」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
小肥
(
こぶと
)
りの仲居は笑った。俺たちの破廉恥を
咎
(
とが
)
める笑いではなかった。むしろ
唆
(
そそのか
)
すような笑いだったから、砂馬は気をよくして
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
のみならず、店の若い者に
唆
(
そそのか
)
されたか、一端の列をくずして、物蔭に隠れ、素早いとこをと、酒の
碗
(
わん
)
をあばき合っている一ト群れさえある。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十六の年には、
賭博師
(
いかさまし
)
の
情夫
(
いろおとこ
)
を持って、男に
唆
(
そそのか
)
されてマルセーユに出奔して、
曖昧
(
あいまい
)
屋の前借りを踏み倒して訴えられている。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
すると、その四日後に、ブラドンに
唆
(
そそのか
)
されたアリスは、この猛烈な家族の反対を無視して、彼と結婚してしまった。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
田舎で
遣
(
やり
)
かけようとしている仕事と、そこで人に囲われている女とから離れることの出来なかった兄の壮太郎は、そう言って話に
乗易
(
のりやす
)
いお島を
唆
(
そそのか
)
した。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
三月にわたる久きをかの美き姿の絶えず
出入
(
しゆつにゆう
)
するなれば、
噂
(
うはさ
)
は
自
(
おのづ
)
から院内に
播
(
ひろま
)
りて、博士の
某
(
ぼう
)
さへ
終
(
つひ
)
に
唆
(
そそのか
)
されて、
垣間見
(
かいまみ
)
の歩をここに
枉
(
ま
)
げられしとぞ伝へ
侍
(
はべ
)
る。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
天下の風雲を
唆
(
そそのか
)
すほどのことをやり得られないとしても、天一坊を得れば
山内
(
やまのうち
)
、赤川となり、大本教を得れば出口信長公となり、一燈園を作れば西田天香となり
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
したがって、彼女がその亭主を
唆
(
そそのか
)
すような調子でなにか云ったとしても、それは完全に意識外のことであって、彼女自身には
些
(
いささ
)
かも責任を負う必要のない問題であった。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さればその方どもがこの度の結構も、平太夫めに
唆
(
そそのか
)
されて、事を挙げたのに相違あるまい。——
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
祖父を
唆
(
そそのか
)
して何かの勝負をしているに違いない、と思うと、手も足も付けられなかった祖父の、昔の生活が頭の中に浮んできて、ぞっと身が震うほど、情なく思ったそうです。
勝負事
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
近頃の私は最早政府の敵ではない筈で、事実、新長官のシュミット氏や今度のチーフ・ジャスティスとも、かなり
巧
(
うま
)
く行っているのだから、新聞を
唆
(
そそのか
)
しているのは領事連に違いない。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
慈悲よりは
憤怒
(
ふんぬ
)
を、
諦念
(
ていねん
)
よりは荒々しい
捨身
(
しゃしん
)
を
唆
(
そそのか
)
すごとく
佇立
(
ちょりつ
)
している。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
義昭の多情は
唆
(
そそのか
)
すにやすいが、毛利、吉川、小早川という
三家鼎立
(
さんけていりつ
)
から成る大勢力が、たやすく自己へ傾いて来るような公算は取りきれなかった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ハイ、さようでございます。心の中に鬼がいて、それが私を
唆
(
そそのか
)
して、人を殺させるのでございます」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ついに一策を案じて暗愚な帝を
唆
(
そそのか
)
し、元老院に対して、こういう誘いの手を打ったのであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
このマドロスのような下等な
毛唐
(
けとう
)
めに、たとえ何であろうとも
唆
(
そそのか
)
されて、共に道行なんということは、日本人としては、聞くだに腹の立つことのようであり、兵部の娘としても
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
木賀も、一目見たときから、好ましさで一杯だった人だけに、夫人に
唆
(
そそのか
)
されると、興味を感じずにはいられなかった。その人の立ち働いているバーの容子などを、想像しながら
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
おかねのやつ、ことによると藤井に
唆
(
そそのか
)
されたな、と彼は手酌で飲みながら思った。酒屋の話も
腑
(
ふ
)
におちない、十二両などという大枚な金を、番頭が横領したのにこっちへ押しつける。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これはスミスが、もっともうまく
遣
(
や
)
った
商売
(
デイル
)
の一つだった。殺す前にベシイを
唆
(
そそのか
)
して、自分はときどき発作に襲われるようになったというようなことを手紙に書いて、方々の親類へ出させたのだ。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そもそも、わしがとこの息子を
唆
(
そそのか
)
して、
戦
(
いくさ
)
へつれ出したのは、ここの悪蔵じゃないか。又八はな、本位田の家にとっては、大事な大事な、
後継
(
あととり
)
じゃぞ。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ハハア、その女に
唆
(
そそのか
)
されて、質実な村の生活を棄てて、町へ出ようとしているのだな。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あたしが
唆
(
そそのか
)
したようなものです、とおふみは云った。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
(たとえ
唆
(
そそのか
)
す者があっても、ゆめ、太刀習いなどなさるまいぞ。親兄弟の
後生
(
ごしょう
)
を念じ、髪を下ろして、再び
縄目
(
なわめ
)
の
憂
(
う
)
き
目
(
め
)
など尼に見せてくださるなよ)
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「またおめえが
唆
(
そそのか
)
したんだろう」
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これが——海を隔てた
阿波
(
あわ
)
、四国の三好党と結びついたり、将軍
義昭
(
よしあき
)
の弱点をうまく
唆
(
そそのか
)
したり、
近畿
(
きんき
)
や堺の町人に悪宣伝をまいたり、
一揆
(
いっき
)
を
焚
(
た
)
きつけたり
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
館の土倉へ、どしどし運んでしまえ。なにも、
他人
(
ひと
)
の物じゃないぞ。天地も照覧あれ、将門は、おまえたちに、ケチな盗み鎌など
唆
(
そそのか
)
すものか。おれと暮すなら、おれを信じろ
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼が
唆
(
そそのか
)
したか知らぬが、叛軍の指揮に当っているそうだが、気の知れない馬鹿者ではある
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
近頃、上方に威を張る者にたいして、家康が安閑と坐視しているかの如き態にあきたらぬ
若者輩
(
わかものばら
)
にケシかけられ、ひとつ、家康の前へ出て、
諫言
(
かんげん
)
を試みよと、
唆
(
そそのか
)
されて来たのであろう。……どうじゃ
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山賊などを
唆
(
そそのか
)
せて、わしを脅してみたりした
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「……アアやっぱり、思えばおれは、お人好しだったに
違
(
ちげ
)
えねえ。あいつに
唆
(
そそのか
)
されて関ヶ原へ出かけた時から今日に至るまで。——だが俺も、こう踏みつけられちゃあ、
何日
(
いつ
)
までお人好しじゃいねえぞ。野郎、今にどうするか、覚えていろよ」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唆
常用漢字
中学
部首:⼝
10画
“唆”を含む語句
教唆
示唆
教唆罪
示唆的