味淋みりん)” の例文
序でに酒屋へ行って酒を二升、味淋みりんを一升ばかり、それから帰りに半紙を十じょうばかりに、煙草を二玉に、草鞋わらじの良いのを取って参れ
小山の奥さん、梅干を煮ますのは最初三度ほどもよく湯煮漏ゆでこぼしてそれから味淋みりんとお砂糖と鰹節かつおぶしを沢山入れて三時間位よく煮詰めるのです。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
皿の中の汁以外に、ワリシタを入れた器があり、それに秘伝もののワリシタが入っているのだが、その蓋を除ると、プーンと強い味淋みりんの匂いがしたのを、これも判然覚えている。
牛鍋からすき焼へ (新字新仮名) / 古川緑波(著)
「そのな、焼蛤は、今も町はずれの葦簀張よしずばりなんぞでいたします。やっぱり松毬まつかさで焼きませぬと美味おいしうござりませんで、当家うちでは蒸したのを差上げます、味淋みりん入れて味美あじよう蒸します。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むかし僕等が小石川の御寺で自炊をしている時分に鈴木のとうさんと云う人がいてね、この藤さんが大変味淋みりんがすきで、ビールの徳利とっくりへ味淋を買って来ては一人で楽しみに飲んでいたのさ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『色懺悔』というような濃艶な元禄情味をしたたらした書名が第一に人気に投じて、内容はさしてすぐれたものではなかったが、味淋みりん鰹節かつおぶしのコッテリした元禄ばりの文章味が読書界を沸騰さした。
「赤いのは」と聞けば「色でそめやしたで」とまた扇を叩いた。色は樺太かばふとのフレップ酒に似て、地の味はやはり焼酎の刺激がある。土地の名産忍苳酒にんとうしゅ味淋みりんに強い特殊の香気を持たしたものらしい。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
と是から女房が支度をするのに、前川まえがわれた山女やもめ岩魚いわなという魚に、其の頃会津辺から𢌞る味淋みりんのような真赤まっかな酒で
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
玉江嬢「あじのお料理も色々ございましょうね」お登和嬢「ハイ、鰺の酢煮は一度白焼にしたものを酢と味淋みりんと醤油とで煮て、生姜しょうがをかけて出します。 ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし主命ですから反抗はんこうする訳にも行きませんので、料理人に命じて秋刀魚の細い骨を毛抜けぬきで一本一本かして、それを味淋みりんか何かにけたのを、ほどよく焼いて、主人と客とに勧めました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鮓も少し取ってくるように、それから孝助殿は酒はあがらんから五合ばかりにして、味淋みりんのごく良いのを飲むのだから二合ばかり、それから蕎麦そばも道中にはあるが
豚の三枚肉を杉箸すぎばしが通るほどに湯煮ゆでて一寸四角に切って水一升に酒一合味淋みりん一合位な割で五時間ほどよく煮て火から卸す一時間も前に醤油を多く入れて煮詰につめるのだ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
玉子豆腐たまごどうふはどうしてできるかこれまた不明である。食うことは知っているが拵える事は全く知らない。その他味淋みりんにしろ、醤油にしろ、なんにしろかにしろすべて知らないことだらけである。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを細かく刻んで醤油と味淋みりんとで一度下煮をしてその煮た汁と一緒に御飯へ炊込たきこみますが煮た汁ばかりでは味が足りませんから別に醤油とお酒を好いほどに足します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さア奉公人は贔屓ひいきをする者もあり、又せん内儀おかみさんればんな事はないなどと云い、中には今度の内儀は惣菜の中に松魚節かつおぶし味淋みりんを入れるからいなどと小遣こづかいを貰うを悦ぶ者もあり
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
醤油しょうゆ味淋みりんは昔から交っている。しかし酒と煙草をいっしょにめば咳が出る。親のうつわの方円に応じて、盛らるる水の調子を合わせる欽吾ではない。日をれば日を重ねてへだたりの関が出来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの伊勢茂いせもさんへ、番頭さんに言付けられてお使にいったら、伊勢茂の番頭さんは誠に親切な人で、お前は酒を飲まないから味淋みりんがいゝ、丁度流山ながれやまので甘いからおあがりでないかと云われて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
栗の含ませは先ず皮のままよく蒸してそれから皮をいて一升の栗ならば味淋みりん二合砂糖一斤塩小匙一杯半の割で弱い火へかけて気長に煮てそのままそのつゆへ漬けておけば長く持って段々味が出る。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人参をく薄く短冊形たんざくがたって酢と味淋みりんと砂糖と塩でよく煮たのです。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)