トップ
>
十六夜
>
いざよい
ふりがな文庫
“
十六夜
(
いざよい
)” の例文
何時
(
いつ
)
の間にやら雪は止んで、五六寸
積
(
つも
)
った庭を、
十六夜
(
いざよい
)
の月が青白く照し、世界は夢の国のように、静寂に、神秘的に変貌して居るのでした。
猟色の果
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「たまたま逢ふに切れよとは、
仏姿
(
ほとけすがた
)
にあり
乍
(
なが
)
ら、お前は鬼か
清心様
(
せいしんさま
)
」という歎きは
十六夜
(
いざよい
)
ひとりの歎きではないであろう。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
藤の花の匂い、ほのかであり、
十六夜
(
いざよい
)
の光、清らかである。こんな奇麗な
佳
(
い
)
い晩に、二人は斬り合おうとするのであった。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
汚れた
瓦
(
かわら
)
屋根、目に
入
(
い
)
るものは
尽
(
ことごと
)
く
褪
(
あ
)
せた寒い色をしているので、芝居を出てから一瞬間とても
消失
(
きえう
)
せない
清心
(
せいしん
)
と
十六夜
(
いざよい
)
の
華美
(
はで
)
やかな姿の記憶が
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
狂言は
黙阿弥
(
もくあみ
)
の『
小袖曽我薊色縫
(
こそでそがあざみのいろぬい
)
』で、
小団次
(
こだんじ
)
の
清心
(
せいしん
)
に
粂三郎
(
くめさぶろう
)
の
十六夜
(
いざよい
)
、
三十郎
(
さんじゅうろう
)
の
大寺正兵衛
(
おおでらしょうべえ
)
という評判の顔あわせ。
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
だが、そのとき、殺気を
和
(
なご
)
めるようにぽっかりと
光芒
(
こうぼう
)
爽
(
さや
)
けく昇天したものは、このわたりの水の深川本所屋敷町には情景ふさわしい、
十六夜
(
いざよい
)
の春月でした。
旗本退屈男:02 第二話 続旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
客もあるじも
十六夜
(
いざよい
)
の月を待つような、風流なのびやかな、さりとて一種の待ちわびしいような心持で、その美しい乙女のあらわれて来るのを待っていた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
十六夜
(
いざよい
)
の夜半でござった。師匠の御新造の
思召
(
おぼしめし
)
とて、師匠の娘御が、ソッと忍んで、蕎麦、蕎麦かきを……
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『
十六夜
(
いざよい
)
日記残月抄』に、間々は
儘
(
まま
)
にて、土が心の儘に崩るる所をいう。上野の大真間などもその意なりとあり。げにも
渡瀬
(
わたらせ
)
川の高崖にて、躍滝というあたりなどはさる所なり。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
月は、横浜を
発
(
た
)
ってから大きくなるばかりで、その夜はちょうど
十六夜
(
いざよい
)
あたりでしたろうか。太平洋上の月の
壮大
(
そうだい
)
さは、
玉兎
(
ぎょくと
)
、銀波に映じ、といった古風な形容がぴったりする
程
(
ほど
)
です。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
十六夜
(
いざよい
)
清心
(
せいしん
)
が身をなげた時にも、
源之丞
(
げんのじょう
)
が
鳥追姿
(
とりおいすがた
)
のおこよを見そめた時にも、あるいはまた、
鋳掛屋
(
いかけや
)
松五郎が
蝙蝠
(
こうもり
)
の飛びかう夏の夕ぐれに、
天秤
(
てんびん
)
をにないながら両国の橋を通った時にも
大川の水
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
左大臣家では東の御殿をみがくようにもして
設備
(
しつら
)
い婿君を迎えるのに遺憾なくととのえて
兵部卿
(
ひょうぶきょう
)
の宮をお待ちしているのであったが、
十六夜
(
いざよい
)
の月がだいぶ高くなるまでおいでにならぬため
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
この季節のならいで、薄雲のかかった空に
十六夜
(
いざよい
)
のおぼろ月があった。
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「十一、十二も瞬く間、お月様いくつ、十三泣き面、十四は頓死、十五夜お月様餠つきのお突き、
十六夜
(
いざよい
)
月は誰と見ん、十七娘か二人と見れば、飽かずながめてにくからぬ、十九(苦)も忘れて、二十(重)の喜び……」
猿飛佐助
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
旧暦
十六夜
(
いざよい
)
の月が赤く森から出る。
震災日記より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「どうも
背後
(
うしろ
)
暗い
弁解
(
いいわ
)
けだの、空の
十六夜
(
いざよい
)
を眺めるには、吟味所の壁へピッタリと耳を当てるにも及ぶまいが」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
箱根路は険阻だが、足柄路のように大廻りをしないので普通の足で一日行程ほどの違いになり、
十六夜
(
いざよい
)
日記の婦人達も急ぐ旅には箱根路を通ったらしくみえている。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
小唄か何か
口吟
(
くちずさ
)
みながら、
十六夜
(
いざよい
)
の月明りにすかして、何の気もなくヒョイと見ると、十
間
(
けん
)
ばかり先に、
欄干
(
らんかん
)
へ片足を掛けて、川へ飛込もうとしている人間があります。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
〽しばし
彳
(
たたず
)
む
上手
(
うわて
)
より
梅見返
(
うめみがえ
)
りの舟の唄。〽忍ぶなら忍ぶなら
闇
(
やみ
)
の夜は置かしやんせ、月に雲のさはりなく、
辛気
(
しんき
)
待つ宵、
十六夜
(
いざよい
)
の、
内
(
うち
)
の
首尾
(
しゅび
)
はエーよいとのよいとの。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
源氏は言っていたように
十六夜
(
いざよい
)
の月の
朧
(
おぼ
)
ろに
霞
(
かす
)
んだ夜に命婦を訪問した。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「おいらんは何て方?……
十六夜
(
いざよい
)
さん、
三千歳
(
みちとせ
)
さん?」
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十六夜
(
いざよい
)
の月を
茫然
(
ぼんやり
)
と窓を通して眺めながら、
鳰鳥
(
におどり
)
は尚も
来
(
こ
)
し
方
(
かた
)
を
夢現
(
ゆめうつつ
)
のように思いやった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
十六夜
(
いざよい
)
か。」
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
冴え切った空には星の群が猫眼石のような変化ある光を
互替
(
かわるがわる
)
に投げ合って夜の神秘を囁くのを羨ましくでも思ったのか、
十六夜
(
いざよい
)
の月が野の地平線へ黄金の盆のような顔を出した。
死の復讐
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
おりから、
十六夜
(
いざよい
)
の冬の月寒々と空に冴え返り見渡す限り丘も山も雪の
白無垢
(
しろむく
)
に包まれて白一色の物凄さ。忽然その時四方の山から飢えと寒さに
焦心
(
いきりだ
)
った狼の声々が聞こえて来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
十
常用漢字
小1
部首:⼗
2画
六
常用漢字
小1
部首:⼋
4画
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
“十六夜”で始まる語句
十六夜日記
十六夜薔薇
十六夜清心