化粧つくり)” の例文
「さあ、若いものは遅くなると危いで、化粧つくりなどはいい加減にして、早くおいでと言うに。」と、婆さんはやるせなくき立てた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
髪はほつれ、お化粧つくりははげ、衣紋えもんはくずれて、見る影もありません。まるで、このトンガリ長屋のおかみさんの一人のよう……。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いいえ、ちっともそそけてはいませんよ。おほほほほ。お化粧つくりがよくできましたこと! ほほほほッ。ほれぼれいたしますよ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
お妙が奈良漬にほうとなった、顔がほてると洗ったので、小芳が刷毛はけを持って、さっとお化粧つくりを直すと、お蔦がぐい、と櫛をいて一歯入れる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それかと思ふと、夜の九時過に湯へ行つて來て、アノ階段はしごの下の小さな室で、一生懸命お化粧つくりをしてる事なんかあるんだ。正直には正直な樣だがね。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
うつわらはるゝはずなんなみだ化粧つくりがはげてはどくなりうし乘換のりかへるうまきはなし内々ない/\ることならんを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「房ちゃん、お前さんにもお化粧つくりしてげましょう——オオ、オオ、おぶうに入って好い色に成った」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
不意のお化粧つくり それから両親がです、娘に向って「まあ今日は顔も身体もよく拭き取らねばならん」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「それは不安だ。……よしよし、一緒に行ってやろう。案じないではやく、お化粧つくりをしておいで」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姿、容子、化粧つくりおごり、身分のあるもののおてかけか寵姫おもいものか、およそ容易ならぬ女でした。
奥様は勿論ですが、自分も髪をゆい直したり、着物を着かえたり、よそ行きの帯を締めたりして、一生懸命にお化粧つくりをして、日の暮れるのを待っていました。お朝はきょうも厭な顔をしていました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それかと思ふと、夜の九時過に湯へ行つて来て、アノ階段はしごの下の小さな室で、一生懸命お化粧つくりをしてる事なんかあるんだ。正直には正直な様だがね。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おひろはお絹に比べると十二三も年が少なかったけれど、髪が薄い方なので、お化粧つくりをするのに時間が取れた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これと、床の間の怪しい山水は、家主のお愛想なんです——あの人がまた旅へ姿見を持って出るような心掛けなら、なに、こんな処で、平気でお化粧つくりをする事もなかろう。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
化粧つくりもせいぜいきれいになさるがいい、遊山ゆさんもいい、芝居も結構。こんな割のいい病気はない……だが一ついけない、男はな。いくら暇があっても、色恋だけは禁制でござるよ
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うすらさびしきやうものおもはしげにて、いづ華族くわぞくであらうお化粧つくり濃厚こつてりだとよしらうふりかへりてふをみゝにもれぬらしきさまにて、れとうちながめたゞ悄然しよんぼりとしてあるにらうこゝろならず
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「伯母さん、お化粧つくりするの?」とお房は伯母の側へ来てのぞいた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
綺麗にお化粧つくりをして、羽織などを着替えたお今が、そこに枕頭まくらもとの火鉢の前にぽつねんと坐っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
面白え、となった処へ、近所の挨拶をすまして、けえって来た、お源坊がお前さん、一枚いちめえ着換えて、お化粧つくりをしていたろうじゃありませんか。蚤取眼のみとりまなこ小切こぎれを探して、さっさと出てでも行く事か。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お化粧つくり
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お島が住込むことになってから、一層綺麗にお化粧つくりをして、上さん気取で長火鉢の傍に坐っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
藤本へかえったのは、もう日の暮方近くで、芸者衆はようやく玄関わきの六畳で、鏡の前に肌ぬぎになりお化粧つくりをしていた。彼女たちの気分も近頃目立ってだらけていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
好子は床を出ると、鏡の前でお化粧つくりをした。
水ぎわの家 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
化粧つくりをすましたところであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)