勘当かんどう)” の例文
旧字:勘當
蘿月は一家の破産滅亡の昔をいい出されると勘当かんどうまでされた放蕩三昧ほうとうざんまいの身は、なんにつけ、禿頭はげあたまをかきたいような当惑を感ずる。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「いや、そんな仔細ではないが、右馬介めは、不届きな奴だ。こよい限り勘当かんどうしたぞ。よも姿は見せまいが、以後近づけるな」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これさえあれば御殿の勘当かんどうも許されるからと喜んで妹と手をひきつれて御殿の方に走って行くのを、しっかり見届けた上で
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
『われひとりを悪者として勘当かんどう除籍、家郷追放の現在、いよいよわれのみをあしざまにののしり、それがために四方八方うまく治まり居る様子』
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「あいつが使いおった金でもあれば、今度も急場だけはしのげたかも知れぬ。それを思えば勘当かんどうしたのは、………」
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世間のあらゆる人々はさんざんに私をののしりあざけりました。肉親のすべての人からは私を勘当かんどうして絶交を申し渡されました。それはあたりまえのことです。
私の思い出 (新字新仮名) / 柳原白蓮(著)
「ウン。それに違いないのだ。ちょうど姉歯早川組の奸計かんけいと、両親の勘当かんどうとで、板挟みになって死んだ訳だナ」
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
昔の言葉でいえば、まあ勘当かんどうなのでしょう。あるいはそれほど強いものでなかったかも知れませんが、当人はそう解釈していました。Kは母のない男でした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大先生はああやって竜之助様を勘当かんどうしておしめえなすって、誰が何といっても許すとおっしゃらねえが
「右門じゃと? ハテな、その右門も仔細あって、勘当かんどうした上は、父と云っても赤の他人じゃ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「でも、栄三郎様もお艶ゆえに実家を勘当かんどうされている身でございますから、この際、離縁りえんをとりますには、いくらかねえ……でないと、お話が届きますまいと存じますよ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
寺田にしては随分ずいぶん思い切った大胆だいたんさで、それだけ一代にのぼせていたわけだったが、しかし勘当かんどうになった上にそのことが勤め先のA中に知れて免職めんしょくになると、やはり寺田は蒼くなった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
何かお國殿とおれと何か事情わけでもありそうにいうが、己も養子にく出世前の大切な身体だ、もっとも一旦放蕩ほうとうをして勘当かんどうをされ、大塚の親類共へ預けられたから、左様思うも無理もないようだが
耶蘇を信ずる為に、父から勘当かんどう同様どうようの身となった。学校でも迫害を受けた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
余は余の現世の楽園と頼みし教会より勘当かんどうせられたり。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「帰って来ないようなら、もう宜いよ。勘当かんどうだ」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「わしはお師匠さまから勘当かんどうされた」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勘当かんどうされても為方しかたが御座いません。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
余ッ程前に勘当かんどうされて。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
『われひとりを悪者として勘当かんどう除籍、家郷追放の現在、いよいよわれのみをあしざまにののしり、それがために四方八方うまく治まり居る様子、』
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
若旦那柳絮はいつぞやなかちょうの茶屋に開かれた河東節かとうぶしのおさらいから病付やみつきとなって、三日に上げぬ廓通くるわがよいの末はおきまりの勘当かんどうとなり、女の仕送りを受けて
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「又四郎、林助のふたりは、もとより少将の家臣ではないが、こよいかぎり西山荘の出入りもとめる。みなもおぼえておけよ。両名は勘当かんどうした者であるぞ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは二年以前の雪のよる勘当かんどう御詫おわびがしたいばかりに、そっとうちしのんで行きました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは、わたくしに近ごろまで栄三郎とか申す愚弟ぐていがひとりあるにはありましたが、ただいまではあるやむなき事情のために勘当かんどう同様になっておりまして、言わばそれがしとは赤の他人。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これを聞いたヨシ子の両親は非常に立腹し、直ちに勘当かんどうを申し渡したとの事であるが、美人の評判が高いままに、あらゆる誘惑と闘いつつ、無事にこの四年間をつとめて来たものであった。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まさか土地柄とちがら、気性柄蝶子には出来なかったが、といって、わてを芸者にしてくれんようなそんな薄情はくじょうな親テあるもんかと泣きこんで、あわや勘当かんどうさわぎだったとはさすがに本当のことも言えなんだ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
兄がおやじに言付いつけた。おやじがおれを勘当かんどうすると言い出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「か、勘当かんどうじゃ! 勘当じゃ! 子には背かれ、家臣には裏切られ、鉱山からは鉱石いしが出ぬ! 葡萄大谷ももう末じゃ! 出てしょう! 出て失しょう! ことごとく去れよ! わしは一人じゃ! 俺は一人じゃ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
羞恥しゅうち深き、いまだ膚やわらかき赤子なれば。獅子ししを真似びて三日目の朝、崖の下に蹴落すもよし。崖の下の、蒲団ふとんわするな。勘当かんどうと言って投げ出す銀煙管ぎんぎせる
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
父の勘当かんどうを受けている事、今はあぶれものの仲間にはいっている事、今夜父のうちへ盗みにはいった所が、はからず甚内にめぐり合った事、なおまた父と甚内との密談も一つ残らず聞いた事
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その頃は自分もやはり若くて美しくて、女にすかれて、道楽して、とうとう実家を七生しちしょうまで勘当かんどうされてしまったが、今になってはその頃の事はどうしても事実ではなくて夢としか思われない。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
侍のくせに、極道ごくどうをし尽し、勘当かんどうもされ、浪人の味も知っている。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「公達もない町人もない、武士もなければ百姓もない、ただあるものは一個の人間! これが俺の思想なのだ。公達だなどと厭な言葉だ。それに俺は飛鳥井家からは最近勘当かんどうされた身だ、そういう云い方はめてくれ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かねてその色白くなよなよしたからだつきが気にくわず、十四歳の時、やわらかい鼻紙をふところに入れているのを見て、末の見込み無しと即座に勘当かんどうを言い渡し
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「その正成は勘当かんどうした」