剥取はぎと)” の例文
ほうしょの黒の五つ紋(借りもの)を鴨居かもいの釘に剥取はぎとられて、大名縞とて、笑わせる、よれよれ銘仙めいせんの口綿一枚。素肌の寒さ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女等は衣類まで剥取はぎとられて、みじめなさまになつたが、この事を聞いた将門は良兼とは異つた性格をあらはした。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
安土竜太郎がふいに立って外へ出て行ったかと思うと、間もなく赤葡萄酒の——途中で日本製のあくどいレッテルを剥取はぎとって——びんを二三本抱えて戻って来る。
溜息の部屋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
咽喉から腹、腹から足、と次第に黒い毛皮が剥取はぎとられる。膏と血との臭気にほひは斯の屠牛場に満ちあふれて来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
大概たいがい洞察みぬかれし樣子にて扨てはあやしき事なりその女をころし又昌次郎梅等が着物きものを着せ置傳吉に難儀なんぎを掛罪におとさんとはかりしやも知難し首をかくす程なれば着類きものをも剥取はぎとるべきに夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
物をもいわず裲襠を剥取はぎとってずたずたに引裂き鼈甲の櫛笄や珊瑚さんごかんざしをば惜気おしげもなく粉微塵こなみじん踏砕ふみくだいたのち、女を川の中へ投込んだなり、いかにもせわしそうに川岸をどんどん駈けて行く。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
見付け次第にだましたり剥取はぎとったりして親船へ持運びして、女のいなアかしらの妾、また頭の気に入らぬ女は寄ってたかって勝手にした其の上に、新潟のくるわへ売飛ばすという寸法で、悪事に悪事を重ねるうち
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして、洋服を剥取はぎとると、ドアーの鍵を出して改めた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
次郎の寝顔から剥取はぎとって来た出目洞白でめどうはく般若はんにゃの神作。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
懐中ものまで剥取はぎとられた上、親船おやぶね端舟はしけも、おので、ばら/\にくだかれて、帆綱ほづな帆柱ほばしら、離れた釘は、可忌いまわし禁厭まじない可恐おそろし呪詛のろいの用に、みんなられてしまつたんです。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
抵抗てむかひらずはだかにされて、懷中くわいちうものまで剥取はぎとられたうへ親船おやぶね端舟はしけも、をので、ばら/\にくだかれて、帆綱ほづな帆柱ほばしらはなれたくぎは、可忌いまはし禁厭まじなひ可恐おそろし呪詛のろひように、みんなられてしまつたんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主人はハツタと睨附ねめつけ、「畜生よ、男は一刀に斬棄きりすてたれど、おのれにはむやうあり」とのゝしり狂ひ、あきれ惑ふお村の黒髪をりて、廊下を引摺ひきずり縁側に連行つれゆきて、有無を謂はせず衣服を剥取はぎと
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)