前借まへがり)” の例文
よろしう御座ござんすたしかに受合うけあひました、むづかしくはお給金きうきん前借まへがりにしてなりねがひましよ、家内うちとはちがひて何處いづこにも金錢きんせんらちきにくけれど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なあに、おれはあの會計係に逢つて、あの吝嗇坊けちんばう野郎を拜みたほして、あはよくば幾何なにがしか月給の前借まへがりをする期待あてでもなかつたなら、どうして役所へなんぞ行つてやるものか。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
なにか、自分じぶん天守てんしゆ主人あるじから、手間賃てまちん前借まへがりをしてつて、かりかへ羽目はめを、投遣なげやりに怠惰なまけり、格合かくかうをりから、わかいものをあふつて、身代みがはりにはたらかせやうかもはかられぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なに、前借まへがりをしやうと云つたのだ。所が中中なかなかさない。僕にすと返さないと思つてゐる。しからん。僅か二十円ばかりかねだのに。いくら偉大なる暗闇くらやみいて遣つても信用しない。つまらない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一筋繩でゆく代物ぢやあないて! つひぞあん畜生が一月分だつて月給の前借まへがりをさせた例しがあるかい——それよりやあ、最後の審判の來るのを待つた方がましなくらゐだ。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
こゝろざしはうれしけれどかへりてからがをんなはたらき、れのみか御主人ごしゆじんへは給金きうきん前借まへがりもあり、それッ、とふてかへられるものではし、初奉公ういぼうこう肝腎かんじん辛棒しんぼうがならでもどつたとおもはれてもらねば
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)