八幡やはた)” の例文
杉丸太、竹束、樅板もみいたなぞが、次から次へてしなく並んで、八幡やはたやぶみたように、一旦、迷い込んだら出口がナカナカわからない。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
秩父ちちぶ大蛇だいじゃ八幡やはた手品師、軽わざ乗りの看板があるかと思えば、その隣にはさるしばいの小屋が軒をつらねているといったぐあいでした。
そこでいきおい正面の、藪地なるものが問題になるが、渋沢の藪地と来た日には、あの八幡やはたの藪知らずより、もっとこみ入った藪地なんだからなあ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
八幡やはたやぶ知らずで路に迷うて行きづまった場合には後へもどって別の道を試みるよりほかにいたし方がないごとく、哲学者も一度入り口までもどって
我らの哲学 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
うしろになしいそぐに瀬戸せと染領そめりやうきよき小川を打渡り心は正直しやうぢきぺんの實意ぞ深き洲崎村すさきむら五里の八幡やはたも駕籠の中祈誓きせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けだし土地の人は八幡やはたに比し、恐れて奥を探る者無く、見るから物凄ものすご白日闇はくじつあんの別天地、お村の死骸も其処そこうづめつと聞くほどに、うかとは足を入難いれがたし、予は支度したく取懸とりかゝれり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鹽灘しほなだにて早けれど晝餉ひるげしたゝむ空暗く雲重ければいさゝか雨を氣遣ふ虚に付け入り車に乘れと勸む八幡やはたの先に瓜生峠うりふたふげとてあり其麓までと極めて四挺の車を走らす此邊の車には眞棒しんばう金輪かなわ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
今からおよそ十年あまりも前に、広島県安芸あきの国〔県の西部〕の北境ほっきょうなる八幡やはた村で、広さ数百メートルにわたるカキツバタの野生群落やせいぐんらく出逢であい、おりふし六月で、花が一面に満開して壮観そうかんきわ
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
◎先代の坂東秀調ばんどうしゅうちょう壮年の時分、伊勢いせへ興行に赴き、同所八幡やはたの娼家山半楼やまはんろう内芸者うちげいしゃ八重吉やえきちと関係を結び、折々おりおり遊びに行きしが、ある夜鰻をあつらえ八重吉と一酌中いっしゃくちゅう、彼がの客席へ招かれたあと
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
かけまくもあやかしこき、いはまくも穴に尊き、広幡ひろはた八幡やはた御神みかみ、此浦の行幸いでましの宮に、八百日日やおかびはありといへども、八月はつきの今日を足日たるひと、行幸して遊びいませば、神主かみぬしは御前に立ちて、幣帛みてぐらを捧げつかふれ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
同 八幡やはた市 11
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
八幡やはた 山崎
真下の谷底に、ちらちらとが見えましょう、あそこが、八幡やはたの町でございましてね、お月見の方は、あそこから、皆さんが支度をなすって、私どもの裏の山へお上りになりますんでございますがね。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)