ずみ)” の例文
彼らにして他の家を継がずんば、終身部屋ずみとどまり、碌々として世の下草したくさとなり、その姓名を歴史に留むべくもあらず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
元々この重蔵は、ご城下ずみの一浪人、表向き君のご家臣たる者ではござりませぬゆえ、よも後日のるいをご当家へ及ぼすことはなかろうと存じられます。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曰く、ここに武家、山本うじなにがし若かりし頃、兄の家に養わる、すなわち用なき部屋ずみの次男。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
重役の耳へ此の事が聞え、部屋ずみの身の上でも、中根善之進何者とも知れず殺害せつがいされ、不束ふつゝかいたりと云うので、父善右衞門は百日の間蟄居ちっきょ致してまかれという御沙汰でございますから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ころ徳太郎君と申し御部屋ずみにて將監方におはしけるが彼澤の井に御手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あは手向てむけはなに千ねんのちぎり萬年まんねんじやうをつくして、れにみさをはひとりずみ、あたら美形びけい月花つきはなにそむけて、何時いつぞともらずがほに、るや珠數じゆずかれては御佛みほとけ輪廻りんゑにまよひぬべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いや、部屋ずみであろう」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
牛込軽子坂に住む飯島平左衞門とおっしゃる、お広敷番ひろしきばんの頭をお勤めになる旗下屋敷に奉公ずみを致した所、其の主人が私をば我子わがこのように可愛がってくれましたゆえ、私も身の上をあか
また只今そちは、城下ずみの一浪人と申したが、桔梗河原の試合この方、忠房は家重代の家臣とも思うている。たとえ当家に後日のるいがあるとなしとにかかわらず、決してそちを見殺しにはならぬ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なし居たり時に大岡殿藤助に向はれ其方は油屋五兵衞方へ何頃いつごろより奉公ずみ致し又何頃いつごろ眼病がんびやうにていとまとりしやと申さるゝに藤助私し儀は十六歳の時より五兵衞方へ參り七ヶねん相勤あひつとめ候處昨年春中はるぢうより眼病を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
非業の最期を遂げたゆえ、親のかたきを討ちたいと、若年の頃より武家奉公を心掛け、漸々よう/\の思いで当家へ奉公ずみをしたから、どうか敵の討てるよう剣術を教えて下さいと手前の物語りをした時
見られ下谷山崎町家持いへもち五兵衞召仕ひ久兵衞其方生國は何國いづくにて年はなん歳なるやまた何頃いつごろより五兵衞方へ奉公ずみ致したるや有體に申立よと云はるゝに久兵衞私し生國は上總國かづさのくに東金とうがねにて五ヶ年以前より五兵衞方へ奉公ずみ致しをりとしは當年四十二歳に相成候と申しければ越前守殿て又其方如何成いかなる所存にて五兵衞の悴を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)