づた)” の例文
旧字:
改札孫の柴田貞吉しばたていきちは一昼夜の勤務から解かれて交代の者にはさみを渡した。朝の八時だった。彼は線路づたいに信号所の横を自宅へ急いだ。
汽笛 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
余は廊下ろうかづたいに書院に往って、障子の外にたたずんだ。蓄音器が歌うのではない。田圃向たんぼむこうのお琴婆さんが歌うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
廊下づたひに中庭なかにはして、おくて見ると、ちゝ唐机とうづくえまへすはつて、唐本とうほんてゐた。ちゝは詩がすきで、ひまがあると折々支那人の詩集をんでゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちょうどはるのことで、奥州おうしゅうを出てうみづたいに常陸ひたちくにはいろうとして、国境くにざかい勿来なこそせきにかかりますと、みごとな山桜やまざくらがいっぱいいて、かぜかないのにはらはらとよろいそでにちりかかりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
和尚おしょうの室を退がって、廊下ろうかづたいに自分の部屋へ帰ると行灯あんどうがぼんやりともっている。片膝かたひざ座蒲団ざぶとんの上に突いて、灯心をき立てたとき、花のような丁子ちょうじがぱたりと朱塗の台に落ちた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三千代は玄関から、門野かどのれられて、廊下づたひに這入つてた。銘仙めいせん紺絣こんがすりに、唐草からくさ模様の一重ひとえ帯をめて、此前とは丸でちがつた服装なりをしてゐるので、一目ひとめ見た代助には、あたらしいかんじがした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)