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づた
語句 | 割合 |
伝 | 71.4% |
傳 | 14.3% |
蔦 | 14.3% |
余は
窃と
廊下伝いに書院に往って、障子の外に
停んだ。蓄音器が歌うのではない。
田圃向うのお琴婆さんが歌うのである。
「
彼方へ
行きませう」と
云つて、
茶の
間を
通り
越して、
廊下傳ひに
小さな
書齋へ
入つた。
其所には
棕梠の
筆で
書いた
樣な、
大きな
硬い
字が五
字ばかり
床の
間に
懸つてゐた。
そこに
一月餘りも
滯在してゐるうちに九
月になり
掛けたので、
保田から
向ふへ
突切つて、
上總の
海岸を
九十九里傳ひに、
銚子迄來たが、そこから
思ひ
出した
樣に
東京へ
歸つた。
碑の
面の戒名は、信士とも
信女とも、苔に埋れて見えないが、三つ
蔦の紋所が、その葉の落ちたように寂しく
顕われて、線香の消残った台石に——田沢氏——と
仄に読まれた。