仕送しおくり)” の例文
既に幾たびも君が学資に窮して、休学のむを得ざらんとするごとに、常にフランス文の手紙がそって、行届ゆきとどいた仕送しおくりがあったではないか。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕の隣の部屋へ一月前から移つて来たピエルと云ふ青年は地方官の息子だが、女の為に巴里パリイの大学を中途でして親父おやぢ仕送しおくりで遊んで居る男だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ちゝ存命中ぞんめいちゆうには、イワン、デミトリチは大學だいがく修業しうげふためにペテルブルグにんで、月々つき/″\六七十ゑんづゝも仕送しおくりされ、なに不自由ふじいうなくくらしてゐたものが、たちまちにして生活くらしは一ぺんし、あさからばんまで
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
約束した仕送しおくりは無論寄さなかつた。のちには手紙が附箋ふせんを附けたまゝ戻つて来た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
たゞ息子むすこ一人ひとりあつて、それが朝鮮てうせん統監府とうかんふとかで、立派りつぱ役人やくにんになつてゐるから、月々つき/″\其方そのはう仕送しおくりで、氣樂きらくらしてかれるのだとことだけを、出入でいり商人しやうにんのあるものからみゝにした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
保ち居るのみなりれば新規しんきかゝへの用人安間平左衞門と言は當年四十歳餘りなれども心あくまでよこしまにして大膽不敵だいたんふてき曲者くせものなり此者金銀を多く所持しよぢなし嘉川家身代しんだい仕送しおくりをするにより主人も手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ちち存命中ぞんめいちゅうには、イワン、デミトリチは大学だいがく修業しゅうぎょうためにペテルブルグにんで、月々つきづき六七十えんずつも仕送しおくりされ、なに不自由ふじゆうなくくらしていたものが、たちまちにして生活くらしは一ぺんし、あさからばんまで
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ただ息子が一人あって、それが朝鮮の統監府とうかんふとかで、立派な役人になっているから、月々その方の仕送しおくりで、気楽に暮らして行かれるのだと云う事だけを、出入でいりの商人のあるものから耳にした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
稼高かせぎだかの中から渡される小遣こづかい髪結かみゆいの祝儀にも足りない、ところを、たといおも湯にしろ両親が口を開けてその日その日の仕送しおくりを待つのであるから、一月とまとめてわずかばかりの額ではないので
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)