久留米くるめ)” の例文
私と先輩の同窓生で久留米くるめ松下元芳まつしたげんぽうと云う医者と二人づれで、御霊ごりょうと云う宮地みやちに行て夜見世よみせの植木をひやかしてる中に、植木屋が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
豊前ぶぜん筑後ちくごは好く存じませんが、筑前ちくぜん殊に福岡は鷹揚おうような人が多い、久留米くるめなどのこせ/\した気性に比ぶれば余程男らしい処があります。
福岡の女 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
「磁器」という二字が磁州窯より起ったのは云うまでもない。「久留米くるめ」とは久留米でできるかすりである。「薩摩さつま」というのも同じではないか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その次に、九州久留米くるめ出生で、上野義民というのは卒業をして後、今日私の工場に通勤して盛んに働いております。
優はなお勧めてまなかった。そこへ一粒金丹いちりゅうきんたんのやや大きい注文が来た。福山、久留米くるめの二カ所から来たのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さつま絣、久留米くるめ絣なぞは勿論もちろんしっかりしたものでしょうが、かえって、場違いの土地でいい絣をつくっている所を田舎へ旅してみかけることがあります。
着物雑考 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
昔「猫」を書いた時、その中に筑後ちくごの国は久留米くるめの住人に、多々羅三平たたらさんぺいという畸人きじんがいると吹聴ふいちょうした事がある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十一月十八日 立花邸に於ける『ホトトギス』六百号記念柳河俳句会を終へ、久留米くるめ、いかだ、小句会。一泊。
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
久留米くるめ中学校の峰元みねもと君は、近ごろ市中でこの遊戯を子どもがしているのを見かけたと報ぜられた。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
などと間伸まのびのした、しかも際立きわだって耳につく東京の調子でる、……その本人は、受取口から見たところ、二十四、五の青年で、羽織はおりは着ずに、小倉こくらはかまで、久留米くるめらしいかすりあわせ
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は久留米くるめから、一人は因州から、一人は福岡ふくおかから、一人は金沢から、一人は柳川やながわから、二人はから、一人は福井から、一人は佐賀から、一人は広島から、五人は桑名から
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よごれた久留米くるめがすりの着物の、えりのうしろは赤茶けて破れているような着物を着て、日曜日でもないのに家さがしをする若い男と、ろくにあいさつもしない無愛想な女の一組には
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
八つの時、学校から帰ると、いきなり、仕立ておろしの久留米くるめの綿入を着せられた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
落付おちつけんと思ひ近處きんじよ近傍きんばうへは古郷なる筑後ちくご久留米くるめへ赴くといひなしてぞ立出ける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
近くの小倉聯隊こくられんたいへも、援軍を急派せよと、電信は打ってある。それに対して、聯隊長心得の乃木希典のぎまれすけ少佐から、第三大隊と第一大隊とが出動して、もう久留米くるめまで進んでいるという返電はあった。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久留米くるめ藩などの大きな屋敷があって、ことに隣りの薩州家などは浪人者がたくさんに出入りして、朝夕戦場のように見えることもあるけれど、こちらのお屋敷は静かであることなどを書きました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
池はその後にそびゆる崖の高さと、また水面に枝を垂した老樹や岩石の配置から考えて、その昔ここに久留米くるめ二十余万石の城主のやかたが築かれていた時分には、現在水のただよっている面積よりも確にその二
久留米くるめなる遍照院へんぜうゐんにわれまうづ「松陰以白居士しよういんいはくこじ」のおくつき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
それから三度も四度も猛烈な手紙を寄こしたあとで、とうとうこう云う条件を出した。自分が三平と誤られるのは、双方とも筑後ちくご久留米くるめの住人だからである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時九郎右衛門が足痛を起して、つえいて歩くようになった。筑後国ちくごのくにでは久留米くるめを五日尋ねた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
九州でも筑後の久留米くるめ、肥前五島ごとう久賀ひさか島でそういい、さらに東北では仙台から石の巻に及び、秋田県の横手もキンズンソウというから、もとは中央の名であったかも知れない。
鹿沼かぬまほうき丸亀まるがめ団扇うちわ天童てんどう将棊駒しょうぎごま久留米くるめかすり結城ゆうきつむぎ土州どしゅうの金物、それぞれに面白い発達である。そういう場所からはとりわけ生産の組織について多くを学ぶことが出来る。
地方の民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
着物は通例の書生のごとく、薩摩絣さつまがすりか、久留米くるめがすりかまた伊予いよ絣か分らないが、ともかくもかすりと名づけられたるあわせを袖短かに着こなして、下には襯衣シャツ襦袢じゅばんもないようだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はかつて久留米くるめの一軒の陶器屋で不思議な品々を見つけた。それはどうしても今出来のものとは思えない。それほど手法が古く形がよく色が美しい。あるものは遠く唐宋とうそうの窯をさえ想起させた。
日田の皿山 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
福岡県久留米くるめ市 5
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)