一陣いちぢん)” の例文
棟近むねちかやまかけて、一陣いちぢんかぜわたつて、まだかすかかげのこつた裏櫺子うられんじたけがさら/\と立騷たちさわぎ、前庭ぜんてい大樹たいじゆかへでみどりおさへてくもくろい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
吾等われらおどろいて立上たちあがる、途端とたんもあらせず! ひゞきたちま海上かいじやうあたつて、天軸てんじく一時いちじくだぶがごとく、一陣いちぢん潮風ていふうなみ飛沫とばしりともに、サツと室内しつない吹付ふきつけた。
かたへに一ぽんえのきゆ、年經としふ大樹たいじゆ鬱蒼うつさう繁茂しげりて、ひるふくろふたすけてからすねぐらさず、夜陰やいんひとしづまりて一陣いちぢんかぜえだはらへば、愁然しうぜんたるこゑありておうおうとうめくがごとし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つかへて、かた食入くひいつて、かすかにもうごかぬので、はツとおもふと、谷々たに/″\峰々みね/\一陣いちぢんぐわう!とわたかぜおと吃驚びつくりして、數千仞すうせんじん谷底たにそこへ、眞倒まつさかさまちたとおもつて、小屋こやなかからころがりした。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)