一掴ひとつかみ)” の例文
そうして、いらッしゃる処が解らないでは、お迎いにくことが出来ませんから、これを……ッて、そう云って、胡麻ごま一掴ひとつかみ、姉様のたもとへ入れてあげたの。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三「アヽ鼻血が出た、與助、男の鼻血だから仔細はあるまいけれども、盆凹ぼんのくぼの毛を一本抜いて、ちり毛を抜くのはまじねえだから、アヽいてえ、其様そんなに沢山抜く奴があるか、一掴ひとつかみ抜いて」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いそいであたしは一掴ひとつかみくさむしつて、此児このこくちいてやつて、かうつた。
らじとべしかひなおよばず、いらつて起ちし貫一は唯一掴ひとつかみと躍りかかれば、生憎あやにく満枝が死骸しがいつまづき、一間ばかり投げられたる其処そこの敷居に膝頭ひざがしらを砕けんばかり強く打れて、のめりしままに起きも得ず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
馬はせな、腹の皮をゆるめて汗もしとどに流れんばかり、突張つッぱった脚もなよなよとして身震みぶるいをしたが、鼻面はなづらを地につけて一掴ひとつかみ白泡しろあわ吹出ふきだしたと思うと前足を折ろうとする。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもひもかけず、屋根やねはしられるやうなしろかぜるやうにきつけますと、ひかかゞや蒼空あをぞらに、眞黒まつくろくも一掴ひとつかみわしおとしますやうな、峰一杯みねいつぱいつばさひらいて、やまつゝんで
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しきりにひものようなものを持って腰の廻りを巻いてるから、帯でもするかと見ると、ら下ったはらわたで、切裂かれへその下へ、押込もうとする、だくだく流れるあけの中で、一掴ひとつかみ、ずるりと詰めたが
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)