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ぐらう
あの
時は
愚老も
不審に
思ひました。
岸和田藩のお
武士が
夜分内々で
見えまして、
主人美濃守急病で
惱んでゐるによつて
診てくれとのお
話。
勤め居たるに思はぬ人に思はれて
藪から
棒の身受の相
談其所で彼めも
途方に
暮此相談を止にして若旦那の方へ
遣て
呉と
泣付れ
愚老も不便と存ずれば
何がなして
遣り
度は思へども何を
『おろかものの
愚老、
碌な
智慧も
持ち
合はせませんが、どういふ
儀でござりませうか。』と、
玄竹はまた
但馬守の
氣色を
窺つた。
示せしより今度
音羽町の
浪人大藤武左衞門の娘お光が
矢張癲癇の
患ひありとて
愚老の方へ
療治をば頼に來しゆゑ
診察するに數年の病のかうぜしなれば
我妙藥の力にても
到底全快
覺束なければ一時は之を
夫は
餘りのお
取こし
苦勞岩木の
中にも
思ひのなきかは
無情き
仰せの
有る
筈なし
扨も
御戀人は
杉原さまとやお
名は
何とぞ
餘り
昨今忌はしい
事を
言はれると
死期が
近よつたかと
取越し
苦勞をやつてな、
大塚の
家には
何か
迎ひに
來るものが
有るなどゝ
騷ぎをやるにつけて
母が
詰らぬ
易者などにでも
見て
貰つたか