-
トップ
>
-
愚老
>
-
ぐらう
あの
時は
愚老も
不審に
思ひました。
岸和田藩のお
武士が
夜分内々で
見えまして、
主人美濃守急病で
惱んでゐるによつて
診てくれとのお
話。
勤め居たるに思はぬ人に思はれて
藪から
棒の身受の相
談其所で彼めも
途方に
暮此相談を止にして若旦那の方へ
遣て
呉と
泣付れ
愚老も不便と存ずれば
何がなして
遣り
度は思へども何を
『おろかものの
愚老、
碌な
智慧も
持ち
合はせませんが、どういふ
儀でござりませうか。』と、
玄竹はまた
但馬守の
氣色を
窺つた。
示せしより今度
音羽町の
浪人大藤武左衞門の娘お光が
矢張癲癇の
患ひありとて
愚老の方へ
療治をば頼に來しゆゑ
診察するに數年の病のかうぜしなれば
我妙藥の力にても
到底全快
覺束なければ一時は之を
左樣でござります。
愚老の
頭を
草紙にして、
御城代樣のお
月代をする
稽古をなさいますので、
成るたけ
頭を
動かしてくれといふことでござりまして。
身受なし
愚老が
宅へ
連歸れば四五日内に御
出有れとて金子を