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おへんじ
それからして
氣に
入らぬと
仰しやりまする、
左うかと
言つて
少しなりとも
私の
言條を
立てゝ
負けぬ
氣に
御返事をしましたら
夫を
取てに
出てゆけと
言はれるは
必定
天一坊樣へ日向守
御目通り致し
直に
御伺ひ申度儀御座候得ば明日御
役宅迄天一坊樣に
御入來ある樣との
趣きなりと
述ければ大膳は
篤と
聞濟し其段は一
應伺ひの上
御返事に及び申べしと座を
忘れて
抱き
合ひ
詞もなくよゝと
泣きしがお
前さまに
其やうな
御覺悟させますほどなら
此苦勞はいたしませぬ
御入來の
無きは
不審しけれど
無情き
御返事といふにもあらぬを
八重さぞ
打つけなと
惘れもせんが
一生の
願ひぞよ
此心傳へては
給はるまじや
嬉しき
御返事聞きたしとは
努々思はねど
誰れ
故みじかき
命ぞとも
知られて
果てなば
本望ぞかしと
打しほるれば
何とせん
扨も
人妻となりての
心得は
娘の
時とは
異なる
物とか
御氣に
入らば
宜けれど
若し
飽かれなば
悲しき
事よ
先それよりも
覺束なきは
彼の
文の
御返事なり
御覽にはなりたり
共其まゝ
押まろめ
給ひしやら
却りて
御機嫌を