麻上下あさがみしも)” の例文
相述べ急ぎ登城あるべしとの事なり越前守委細ゐさい承知しようちし則ち馬を急し家來に申付火急くわきふの御用なり駕籠は跡よりまはせと申付麻上下あさがみしもに服を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仙台平せんだいひらの袴に麻上下あさがみしも黒繻子前帯くろじゅすまえおび御寮人ごりょうじんの振袖に錦の帯。織るような人波を押しわけながら、伝兵衛は声をひそめ
祖五郎は早速麻上下あさがみしもで役所へ出ますと、家老寺島兵庫差添さしそえの役人も控えて居り、祖五郎は恐入って平伏して居りますと
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
蕪村の句が金ぴかの上下かみしも、長い朱鞘しゅざやをぼっこんだような趣きとすると、召波の句は麻上下あさがみしもを著て、寸の短い大小を腰にしたような趣きがあるといってよかろう。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
此の人声ひとごえに驚いて、番所の棒がそろつて飛出とびだす、麻上下あさがみしもが群れ騒ぐ、大玄関おおげんかんまで騒動の波が響いた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それが、翌日になると、また不吉ふきつな前兆が、加わった。——十五日には、いつも越中守自身、麻上下あさがみしもに着換えてから、八幡大菩薩に、神酒みきを備えるのが慣例になっている。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うるう七月朔日ついたちにりよに酒井家の御用召があった。たつの下刻に親戚山本平作、桜井須磨右衛門が麻上下あさがみしもで附き添って、御用部屋に出た。家老河合小太郎に大目附が陪席して申渡もうしわたしをした。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
おろし主從四人ほツとばかり溜息ためいきつきながらも先々首尾しゆびよくいつはり出しをよろこび最早氣遣きづかひなしとこゝにて越前守には麻上下あさがみしも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其のうち十五日がまいると、朝五つ時の御登城で、其の日大藏は麻上下あさがみしもでお廊下に控えていると、やがてごそり/\と申す麻上下と足の音がいたす、平伏をする
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
むごたらしい話をするとお思いでない。——聞きな。さてとよ……生肝を取って、つぼに入れて、組屋敷の陪臣ばいしんは、行水、うがいに、身をきよめ、麻上下あさがみしもで、主人の邸へ持って行く。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芸者の揃いの手古舞てこまい姿。佃島つくだじま漁夫りょうし雲龍うんりゅう半纏はんてん黒股引くろももひき、古式のいなせな姿で金棒かなぼうき佃節を唄いながら練ってくる。挟箱はさみばこかついだ鬢発奴びんはつやっこ梵天帯ぼんてんおび花笠はながさ麻上下あさがみしも、馬に乗った法師武者ほうしむしゃ
是れから物頭ものがしらがまいりまして、段々下話したばなしをいたし、權六は着慣れもいたさん麻上下あさがみしもを着て、紋附とは云え木綿もので、差図さしずに任せお次までまかで控えて居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
置き番人は麻上下あさがみしもの者と下役は黒羽織くろはおりを着し者をつめさせ檀家だんかの者たりとも表門の通行つうかうきん裏門うらもんより出入させ墓場への參詣さんけいをば許せども本堂ほんだうへの參詣はかたく相成ざる由を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
楽屋口の板廊下には、松の蔭に、松の蔭に、羽織、袴が、おお、麻上下あさがみしもも立交る。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木挺役きちょうやくが飛んでくる。曳物の先達せんだつが飛んでくる。鳶がくる。麻上下あさがみしもがくる。
のぞいて見ると、行儀霰ぎょうぎあられ麻上下あさがみしもを着て居ります、中原岡右衞門なかはらおかえもんと云う物頭役ものがしらやくを勤めた藤原と従弟いとこ同士でございます、別当も付きまして立派なさむらいがつか/\と来ました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すると翌六日の夕方ゆうかたに、稻垣小左衞門という粟田口國綱のお係りの役人が、年頭のお帰りがけと見えて、麻上下あさがみしもの上へどっしりとした脊割羽織を召し、細身の大小を差して