鬼火おにび)” の例文
白粉おしろいすす鍋墨なべずみ、懐中電灯、電池などと資材は集められた。骸骨おどりのすごさを増すために鬼火おにびを二つ出す計画が追加された。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼ははらのなかで叫びながらあたりの闇を睨んでいるとき、藤助の提灯の火が鬼火おにびのように又あらわれた。彼は片手に小さい手桶をさげている。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まず第一種の例を挙ぐるに、狐火きつねび鬼火おにび蜃気楼しんきろう、その他越後の七不思議とか称するの類にして、物理的または化学的の変化作用より生ずるものをいう。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それからというもの、あお鬼火おにびも、戦争の物音ものおとも、舟をしずめる黒いかげも、あらわれなくなりました。しかしまだときどき、ふしぎなことがおこりました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
鬼火おにびだ。」初め私はかう思つた。そしてこの光は直ぐ消えるだらうと豫想した。ところがそれははつきりと近よりもせず、遠のきもせず燃え續けてゐる。
七日の鬼火おにびに至ってはその名の示す如く、明白に祝賀の火でもなく、また飾り物の処理方法でもなかった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
成程、平家の一杯水か。然う言われゝば聞いたようだね。何しろ此処で皆沈んでしまったんだから浮ばれないのさ。昔は雨の晩にこの辺に鬼火おにびが出たもんだなんてことを
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
夜陰やいん森中もりなかに、鬼火おにびの燃えるかなえの中に熱湯ねっとうをたぎらせて、宗盛むねもりに似せてつくったわら人形をました。悪僧らはあらゆる悪鬼の名を呼んで、咒文じゅもんを唱えつつかなえのまわりをまわりました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
童らはひとしく立ちあがりて沖のかたをうちまもりぬ。げに相模湾さがみわんへだてて、一点二点の火、鬼火おにびかと怪しまるるばかり、明滅し、動揺せり。これまさしく伊豆の山人やまびと、野火を放ちしなり。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
下界万丈げかいばんじょう鬼火おにびに、なまぐさき青燐せいりんを筆の穂に吹いて、会釈えしゃくもなくえがいだせる文字は、白髪しらがをたわしにして洗っても容易たやすくは消えぬ。笑ったが最後、男はこの笑を引き戻すわけには行くまい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(恨みの眉をあげる。)お身はまだ知るまいが、あめ風あれて浪高い夜には、海に数しれぬ鬼火おにびあらわれ、あまたの人の泣く声も悲しげにきこゆるぞ。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
金博士が、砲弾にけて通ったんだろうか。わが印度インドでは、聖者せいじゃが、一団いちだん鬼火おにびに化けて空を飛んだという伝説はあるが、人間が砲弾になるなんて……
正月の七日に至っては、日の数を月と揃える法則にも合わず、年越の一つに算えられてはいるけれども、七草の粥と九州の鬼火おにび以外には、そう大きな行事はない。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
若しも、氣づかれ報いられたときには鬼火おにびのやうに、救ひやうのない泥濘ぬかるみの野に行くより外ないのだ。
そうして、法師の左右さゆうには、かずしれぬあお鬼火おにびがめらめらと、もえていたのでありました。寺男は、こんなに多いさかんな鬼火を、生まれてはじめて見るのでありました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
第六種(怪火編)怪火、鬼火おにび、竜火、狐火きつねび蓑虫みのむし、火車、火柱、竜灯、聖灯、天灯
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
八木君は、空井戸からいどの中にひとりぽっちとなり、心細くなっていた。空井戸の底から上を見上げたとき、井戸の上あたりで、鬼火おにびが二つおどっているのを見て、びっくりした。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
月のないくらいよるには、この壇ノ浦の浜辺はまべや海の上に、かずしれぬ鬼火おにび、——めろめろとしたあおが音もなくとびまわり、すこし風のある夜は、波の上から、源氏げんじ平家へいけとがたたかったときの
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
どうしたかつて、ジエィン? 私は自分を、鬼火おにびのやうな一所不住の人間にしてしまつたのです。何處へ行つたかつて? 私は三月からつ風の精のやうに、氣違ひのやうに、放浪を續けたのです。
左義長さぎちょう・とんど、またはさえの神・鬼火おにび等の名を以て、大きな火をく日はいつになっているか。燃料の集め方、ことにこの火で焼くものの種類など。その火のそばに小屋を作る風があるならその作法。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)