駕籠舁かごかき)” の例文
それは、箱根へ湯治にいったとき、駕籠舁かごかきから息杖いきづえを買って帰り、その杖に諸家から題詩を貰って彫りつけ柱に掛けて自慢していた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
きらひ鎌倉の尼寺あまでらへ夜通のつもりにて行れるなり出入の駕籠舁かごかき善六といふがたつての頼み今夜はこゝに泊られしなりと聞かぬ事まで喋々べら/\と話すを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふだんは掃除水仕事や家の警備に当たり、一朝出動の際はただちに駕籠舁かごかきと早変りする、六尺近い、筋骨隆々たる下男が十人。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
駕籠舁かごかきにもしたたか飲ませているものだから、見ていられない恰好をしてこの騒ぎの中へ、よたよたとかつぎ込んだものです。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
仙「此ん畜生、旦那此の春わっち重三じゅうざさんと安という駕籠舁かごかきを連れて、松戸へ刀の詮議に往った時に出会でっくわしたさむれえなんで」
上田等の同志のものである。短銃は駕籠舁かごかきや家来を威嚇ゐかくするために、中井がわざと空に向つて放つたのである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
雪之丞が、通りの向うの闇を見つめたまま、前に据えられた辻駕籠に、乗ろうとしないので、駕籠舁かごかき
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
駕籠舁かごかきと、車夫くるまやは、建場たてばで飲むのは仕来りでさ。ご心配なさらねえで、ごゆっくり。若奥様に、多分にお心付を頂きました。ご冥加みょうがでして、へい、どうぞ、お初穂を……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幾里の登り阪を草鞋わらじのあら緒にくわれて見知らぬ順礼の介抱に他生たしょうの縁を感じ馬子に叱られ駕籠舁かごかきあざけられながらぶらりぶらりと急がぬ旅路に白雲を踏み草花をむ。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
駕籠舁かごかきは多く辻にいて客に勧めた。彼らは少し暖かくなるとふんどし一つの裸で居た。荷車曳きは寒暑とも通じて裸であった。宮寺には、寒中裸でお参りをする者があった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
馬道を通うお客は、見事な刺青ほりもののある駕籠舁かごかきを選んで乗った。吉原、辰巳の女も美しい刺青の男に惚れた。博徒、鳶の者はもとより、町人から稀には侍なども入墨いれずみをした。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
角から四、五軒さきの質屋の土蔵のまえには、一挺の駕籠が下ろされて、そこには二人の駕籠舁かごかきと先刻の武士らしい男が立っていた。半七はそれを見とどけて、今度は表の格子からはいって来た。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
で、時々駕籠を止めて、客をも駕籠舁かごかきをも休ませた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かへつて説淺草福井町に駕籠舁かごかきを渡世として一人は權三といひ一人は助十とよび二人同長屋に居てまづしきくらしなれども正直ものといはれ妻子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また一人、こもをかぶって橋の欄干らんかんの下から物哀れな声を出しました。兵馬も駕籠舁かごかきもそんな者にはいよいよ取合わないでいるうちに、またしても
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
有中は供に立つ約束をして置きながら、出発の間に合わなかったので、三枚肩の早打で神奈川台へ駆け附け、小判五枚の褒美を貰い、駕籠舁かごかきも二枚貰った。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
駕籠舁かごかきの頻りに駕籠をすすむるを耳にもかけず「山路の菊野菊ともまた違ひけり」と吟じつつ行けば
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
駕籠舁かごかきの言葉をそのまま信じたわけではないが、全然でたらめだとも思わなかった。かれらはくるわの事情に通じているだろうし、自分たちの駕籠へ乗せた以上は客である。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あり合はせた草履ぞうり穿いて出る時、亭主が声を掛けて笑つた。其の炉辺ろべりには、先刻さっき按摩あんま大入道おおにゅうどうが、やがて自在の中途ちゅうとを頭で、神妙らしく正整しゃんと坐つて。……胡坐あぐらいて駕籠舁かごかきも二人居た。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さるゝもいやさに默止もだしれば駕籠舁かごかき共は夫婦に向ひもし旦那もどり駕籠ゆゑ御安直おやすく參りやす何卒どうぞのりなされといひけるに浪人夫婦は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
米友は立木の蔭から、今この家の表へ来た駕籠と駕籠舁かごかきとをじっと見ていました。駕籠が二挺釣らせてありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日雇人足なら馬子にしても駕籠舁かごかきにしてもいい、だが武家ではそうはいかない、どんなに貧しくとも、武家では子供を馬子や駕籠舁にすることはできない、——おまえにもそれだけはわかるだろう
葦は見ていた (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
同業者の馬方や駕籠舁かごかきでさえが、裸松に味方する者の一人も出て来なかったことは勿怪もっけの幸いでした。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
山駕籠に桐油とうゆをまいて、案内に慣れた土地の駕籠舁かごかきが、山の十一丁目までかつぎ上げ、それから本山を経て五十丁峠の間道を、上野原までやろうとするのは、変則であってまたかなりの冒険です。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
驚いて逃げ足をした駕籠舁かごかきも、兵馬の手並に心強く、息杖いきづえふるって加勢するくらいになったから、悪者どもは命からがら逃げ出し、或いは橋の下の河原へ落ちて、這々ほうほうていで逃げ散ってしまいました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この駕籠舁かごかき海道筋かいどうすじの雲助と違って、質朴しつぼくなこの辺の百姓。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、駕籠の中から、駕籠舁かごかきに向って注文しました
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
駕籠舁かごかきはそれと見て立ちすくみ