“香油(こうゆ)” の例文
「不思議(ふしぎ)なこともあるものだ。この酒(さけ)は梅(うめ)の香(にお)いがする。この香(にお)いは、死(し)んだ妻(つま)が髪(かみ)の毛(け)につけていた香油(こうゆ)の香(にお)いそっくりだ。」と、独(ひと)り言(ごと)をして
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
先ぶれは町じゅう馬をはしらせて、ご婚約(こんやく)のことを知らせました。あるかぎりの祭壇(さいだん)には香油(こうゆ)が、もったないような銀のランプのなかでもえていました。
砂地の灼(や)けつくような陽(ひ)の直射や、木蔭(こかげ)の微風(びふう)のそよぎや、氾濫(はんらん)のあとの泥(どろ)のにおいや、繁華(はんか)な大通(おおどおり)を行交う白衣の人々の姿や、沐浴(もくよく)のあとの香油(こうゆ)の匂(におい)や
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
王さまのすぐ下の裁判官(さいばんかん)の子もありましたし農商(のうしょう)の大臣(だいじん)の子も居(い)ました。また毎年じぶんの土地から十石(こく)の香油(こうゆ)さえ穫(と)る長者(ちょうじゃ)のいちばん目の子も居たのです。
いよいよ、好い気持になって、ワアワアへしあってくる娘さん達の、香油(こうゆ)と、汗(あせ)と白粉のムッとする体臭(たいしゅう)にむせていると、いきなり、また吃驚(びっくり)させられました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
年増の手にした雑巾(ぞうきん)であろう温(あたたか)な片(きれ)が双足(りょうあし)に来た。年増の香油(こうゆ)の匂いが気もちよく鼻にしみた。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
このごろは、都会(とかい)の娘(むすめ)の持(も)ちそうなものがほしくなったとみえて、白粉(おしろい)や、香油(こうゆ)のびんなども、いつのまにか買(か)ったものが、戸(と)だなの中(なか)にかくしてありました。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつか、青年(せいねん)が、行商(ぎょうしょう)にきた時分(じぶん)に持(も)ってきたような、青(あお)い貝細工(かいざいく)や、銀(ぎん)のかんざしや、口紅(くちべに)や、香油(こうゆ)や、そのほか女(おんな)たちの好(す)きそうな紅(あか)い絹地(きぬじ)や、淡紅色(うすべにいろ)の布(ぬの)などであったのです。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この青年(せいねん)は、村(むら)へやってきて、娘(むすめ)たちに、貝(かい)がら細工(ざいく)や、かんざしや、香油(こうゆ)のようなものを並(なら)べて商(あきな)ったのです。そして、ときに、彼(かれ)は山(やま)のあちらの国々(くにぐに)の珍(めずら)しい話(はなし)などを聞(き)かせたりしました。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)