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饜
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あ
ふりがな文庫
“
饜
(
あ
)” の例文
彼は毎日海亀の脂や石焼の仔豚や人魚の胎児や蝙蝠の仔の
蒸焼
(
むしやき
)
などの美食に
饜
(
あ
)
いているので、彼の腹は脂ぎって
孕
(
はら
)
み豚の如くにふくらんでいる。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
母子の為には
幾許
(
いかばかり
)
の
幸
(
さいはひ
)
なりけん。彼は貫一に就いて半点の疑ひをも
容
(
い
)
れず、唯
饜
(
あ
)
くまでも
娧
(
いとし
)
き宮に心を
遺
(
のこ
)
して行けり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
帆は風に
饜
(
あ
)
きて、舟は忽ち外海に
※
(
はし
)
り出で、我は
艙板
(
ふないた
)
の上に坐して、藍碧なる波の起伏を眺め居たるに、傍に一少年の
蹲
(
うづくま
)
れるありて、ヱネチアの
俚謠
(
ひなうた
)
を歌ふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
其
陸
(
りく
)
の
菩提樹
(
ぼだいじゅ
)
の蔭に「死の宗教」の花が咲いた印度の
洋
(
うみ
)
は、
餌
(
え
)
を求めて
饜
(
あ
)
くことを知らぬ死の海である。烈しい
暑
(
あつ
)
さのせいもあろうが、印度洋は人の気を変にする。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
饜
(
あ
)
くことを知らない
polype
(
ポリイプ
)
の腕に、自分は無意味の
餌
(
え
)
になって
抱
(
いだ
)
かれていたような心持がして、堪えられない程不愉快になって来るのである。そしてこう云った。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
肉体の欲に
饜
(
あ
)
きて、とこしへに精神の愛に飢ゑたる放縦生活の悲愁ここに
湛
(
たた
)
へられ、或は空想の
泡沫
(
ほうまつ
)
に帰するを哀みて、真理の捉へ難きに
憧
(
あこ
)
がるる哲人の愁思もほのめかさる。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
いや、やっぱり
浮氣
(
うはき
)
がよい、そしたら
彼
(
あ
)
の
人
(
ひと
)
を
直
(
すぐ
)
饜
(
あ
)
いて
予
(
わし
)
へ
返
(
かへ
)
してたもらうによって。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
時々其音が自分と自分の単調に
饜
(
あ
)
いたように、忽ちガアと慣れた調子を破り、凄じい、障子の紙の共鳴りのする程の音を立てて、勢込んで何処へか行きそうにして、忽ち物に行当ったように
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
饜
(
あ
)
くことを知らない嗜欲の脣の前に
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
常に飢ゑ、
饜
(
あ
)
きがたき心の惱み
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
雌伏時代とは違って、今度こそ思い切り派手に此の娯しみに耽ることが出来る。金と権勢とに
饜
(
あ
)
かして国内国外から雄雞の優れたものが悉く集められた。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
饜
(
あ
)
かず、饜かず、彼の慾はこの日より益急になりて、既に自ら心事の不徳を以つて許せる身を投じて、唯快く万事を一事に換へて
已
(
や
)
まん、と深くも念じたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
諸君よ、わが持てる限の物をば、悉く贈るべし、されどおん身等を
饜
(
あ
)
かしむるに足らざるこそ氣の毒なれと答へて、われは進寄りつゝ、手を我
衣兜
(
かくし
)
にさし
籠
(
こ
)
みたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
鮭
(
さけ
)
、
鱒
(
ます
)
、
鯇
(
やまべ
)
なぞは持ちきれぬ程釣れて、草原にうっちゃって来ることもあり、銃を知らぬ山鳥はうてば落ちうてば落ちして、うまいものゝ
例
(
ためし
)
にもなる山鳥の塩焼にも
饜
(
あ
)
いて了まった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それが
氣懸
(
きがゝ
)
りゆゑ、
俺
(
おれ
)
ゃもう
決
(
けっ
)
して
此
(
この
)
暗
(
やみ
)
の
館
(
やかた
)
を
離
(
はな
)
れぬ。
卿
(
そなた
)
の
侍女
(
こしもと
)
の
蛆共
(
うじども
)
と一しょに
俺
(
おれ
)
ゃ
永久
(
いつまで
)
も
此處
(
こゝ
)
にゐよう。おゝ、
今
(
いま
)
こゝで
永劫安處
(
えいがふあんじょ
)
の
法
(
はふ
)
を
定
(
さだ
)
め、
憂世
(
うきよ
)
に
饜
(
あ
)
き
果
(
は
)
てた
此
(
この
)
肉體
(
からだ
)
から
薄運
(
ふしあはせ
)
の
軛
(
くびき
)
を
振落
(
ふりおと
)
さう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
夫は心
猛
(
たけ
)
く、人の
憂
(
うれひ
)
を見ること、犬の
嚏
(
くさめ
)
の如く、
唯貪
(
ただむさぼ
)
りて
饜
(
あ
)
くを知らざるに引易へて、
気立
(
きだて
)
優しとまでにはあらねど、鬼の女房ながらも尋常の人の心は
有
(
も
)
てるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
長老は、自分でも予期しなかった程の
慇懃
(
いんぎん
)
な言葉で、下男に向い、彼が健康を回復した次第を尋ねた。下男は詳しく夢のことを語った。如何に彼が夜毎美食に
饜
(
あ
)
き足るか。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
色と動と音と千変万化の無尽蔵たる海洋の
辺
(
ほとり
)
。野に
饜
(
あ
)
いた彼には、此等のものが時々
幻
(
まぼろし
)
の如く立現われる。然しながら
仮
(
かり
)
にサハラ、ゴビの一切水に縁遠い境に住まねばならぬとなったら
如何
(
どう
)
であろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
饜
部首:⾷
23画
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属饜
饜果
饜飫