もてな)” の例文
神武天皇御東征の時に、大和の土人弟猾おとうかしは生酒を以て皇軍をもてなしたと「日本書紀」にある。牛肉を肴として酒を飲んだものであろう。
牛捨場馬捨場 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
二〇一宿ひとよ供養くやうして二一罪をあがなひたてまつらんと、二二ゐやまひて奥の方に迎へ、こころよく食をもすすめてもてなしけり。
後藤ごとう男爵が少年のころ、何かの折りに、岩倉公いわくらこうの前にされ、菓子をもてなされた。地方からポットの男はめずおくせず、その席上でムシャムシャと菓子を食った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
爾来じらい富山はますます傾慕してかず、家にツィシアンの模写と伝へて所蔵せる古画の鑒定かんていを乞ふを名として、さき芝西久保しばにしのくぼなる居宅に請じておろそかならずもてなす事ありければ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それでほとんどデビーに次ぐの尊敬を払いはじめた。ある日、リーブの所で正餐をデビー夫妻にもてなしたことがあった。その時ファラデーをも陪席させると言い出した。
境内けいだい石碑せきひがあつて、慶長けいちょう五年せきはらえきの時に、山内一豊やまのうちかずとよがこゝに茶亭ちゃていを築いて、東海道をのぼつて来た徳川家康をもてなした古跡こせきであるといふことが彫刻されてゐる。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
倒るゝ音大地を響かせり、立ち寄りてこれを見るに、果して百足のむかでなり、竜神はこれを悦びて、秀郷を様々にもてなしけるに、太刀一振ひとふり巻絹まきぎぬ一つ、鎧一領、頸うたる俵一つ
婚姻こんいん席上せきじやうではさけあとにはながつながるやうといふ縁起えんぎいはうて、ひとつには膳部ぜんぶ簡單かんたんなのとで饂飩うどんもてなすのである。蕎麥そばみじかれるとて何處どこでもいとうた。どんな婚姻こんいんでもそれをわかしゆもらひにく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)