さを)” の例文
木立生ひ繁るをかは、岸までりて、靜かな水の中へつづく。薄暗うすぐらい水のなかば緑葉りよくえふを、まつさをなまたのなかば中空なかぞらの雲をゆすぶる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
荒浪の天うつ波の逆まきのとどろきが上、あああはれ、また、向き向きに、稲妻のさをおびえに連れ連れ乱る、啼き連れ乱る。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひぢをたてゝ泉の面を見ますと、まつさをにさしてゐる月の光の中で、三人の美しい女が、たのしさうに水を浴びてゐます。
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
おれの死骸は沼の底のなめらかな泥によこたはつてゐる。死骸の周囲にはどこを見ても、まつさをな水があるばかりであつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
全く血の氣がなくなつて、消し忘れたうす暗いランプの光りにかの女の額のさをな色が見える。こちらには、それが、實際、死の命令者たる權威でもあるやうだ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
まつさをな稲の槍の間で
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
磯長しながの小ゆるぎの荒浪千鳥。荒浪のそらうつ波の逆まきのとどろきが上、あああはれ、また向き向きに、稲妻のさをおびえに連れ連れ乱る。啼き連れ乱る。
イドリスはまつさをになつてかへつて来ました。王さまのところへいつてどうしたのですと、おかみさんが聞き/\しても、イドリスは返事をさへしません。
ダマスカスの賢者 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
しかしイワンのその声はきれ/″\でした。恐怖のために顔はまつさをになつて、まるでその罪人かなぞのやうに、からだ中をがた/\ふるはせてゐました。
ざんげ (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
時化しけつづき西風強く、夜は絶えて漁火いざりすら見ね、をりをりに雨さへ走り、稲妻のさをうつりに、鍵形かぎがたの火の枝のはりひりひりとき光なす。其ただちとどろく巻波まきなみ
時化しけつづき西風強く、夜は絶えて漁火いざりすら見ね、をりをりに雨さへ走り、稲妻のさをうつりに、鍵形の火の枝のはりひりひりと鋭き光なす。そのただちとどろく巻波。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「こゝへおで。早くお出で。父さまは急に気分が悪くなつた。」と言ひました。男の子はびつくりして、そばへいつて見ますと、お父さまはまつさをな顔をして目をつぶつてゐました。
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
冷たくて白き水仙、ややぬくく黄なる寒菊。水仙のさをの葉は張り、寒菊の葉は半ば枯る。水仙は水仙の影、寒菊は寒菊の影、その壺も玻璃の影して、栗色の砂壁に在り。
ミスのほほはまつさをになりました。たゞ鼻だけが、危険におちいつた船の信号燈のやうに赤くもえたつてゐます。ちんはぐん/\そばへ来て、狂つたやうに、ミスのぐるりをかけまはります。
青い顔かけの勇士 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
冷たくて白き水仙、ややぬくく黄なる寒菊。水仙のさをの葉は張り、寒菊の葉は半ば枯る。水仙は水仙の影、寒菊は寒菊の影、その壺も玻璃の影して、栗色くりいろの砂壁に在り。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
海の空もはれ/″\とまつさをに光つて来ました。
ぽつぽのお手帳 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
沖つ鳥鴨のかしらのまさをくてつらつらかなし泛きにけるかも
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
兵たいの顔色はまつさをになつてしまひました。
一本足の兵隊 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
雪折のさをの真竹はあはれなり三つ割に白く走りけたり
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
裏山のさをの円山のぼりをりよく群れしかも人と牛と羊と
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山里は桑の葉肥ゆる陽のさをを遥けく春や残すならしも
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
澄みとほるさをの真竹に尾の触れて一声啼くか藪原雉子きぎす
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蹴爪に岩角がんかくをつかむ鷹一羽そのしもつ瀬ぞさをに渦巻く
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さをのつまあけの五重のあららぎの今眞闇まやみなり鷺のしき啼き
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
さをのつまあけの五重のあららぎの今真闇まやみなり鷺のしき啼き
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あざやけし、雑草あらくささを、さみどり
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鮮やけし、雑草あらくささを、さみどり。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
地からうねから真つさをだ。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一瞬時いつしゆんじ、——燈火ともしびさを
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さをすばる
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)