“階段(はしご)” の例文
灯のつくころ、中田に来て、いつもの通り階段(はしご)を上がったが、なじみでない新造(しんぞ)が来て、まじめな顔をして、二階の別の室(へや)に通した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
所へ階段(はしご)を上る足音がしたので、来たナと思つたから、腹の運動を止めて何気ない顔をしてると、以前の若い男が小腰を屈めて障子を明けた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
小僧が階段(はしご)を降りるすぐ後からお宮は降りて来た。そしてもう二つ三つというところまでおりて土間に私が突っ立っているのをちらりと見てとるとお宮は
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
と、雪之丞は、そらさぬ微笑で答えながら、白い足袋裏(たびうら)を見せて、内輪の足取りで階段(はしご)を踏んで二階へ上る。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
亦(また)のお出(いで)を待(まち)ますといふ、おい程(ほど)の宜(い)い事(こと)をいふまいぞ、空誓文(そらせいもん)は御免(ごめん)だと笑(わら)ひながらさつ/\と立(た)つて階段(はしご)を下(お)りるに、お力(りき)帽子(ぼうし)を手(て)にして後(うしろ)から追(お)ひすがり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
階段(はしご)も轟(とどろ)と上る足音障子の外に絶えて、「ああいい心地(きもち)!」と入り来る先刻の壮夫(わかもの)。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
博士は階段(はしご)から顔を覗(のぞ)けた広岡氏を振りかへつた。
で、そんな話をしてゐる中に、さつきの女中は早くも寝道具を運んで来たらしく、蚊帳のカンの鳴るのがチヤラチヤラ階段(はしご)のあたりで聞えた。
島の唄 (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
玄関から上ると、右と左が事務室に宿直室、奥が印刷工場で、事務室の中の階段(はしご)を登れば、二階は応接室と編輯局の二室(ふたま)。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おい程の宜い事をいふまいぞ、空誓文(からせいもん)は御免だと笑ひながらさつ/\と立つて階段(はしご)を下りるに、お力帽子を手にして後から追ひすがり、嘘か誠か九十九夜の辛棒をなさりませ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おりから階段(はしご)の音して、宿の女中(おんな)は上り来つ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それかと思ふと、夜の九時過に湯へ行つて來て、アノ階段(はしご)の下の小さな室で、一生懸命お化粧(つくり)をしてる事なんかあるんだ。正直には正直な樣だがね。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
二階は十二畳敷二間(ふたま)で、階段(はしご)を上つたところの一間の右の一隅(かたすみ)には、欅(けやき)の眩々(てら/\)した長火鉢が据ゑられてあつて、鉄の五徳に南部の錆(さ)びた鉄瓶(てつびん)が二箇(ふたつ)懸(かゝ)つて
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
おい程の宜い事をいふまいぞ、空誓文(そらせいもん)は御免だと笑ひながらさつさつと立つて階段(はしご)を下りるに、お力帽子を手にして後(うしろ)から追ひすがり、嘘か誠か九十九夜(よ)の辛棒をなさりませ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と女中(おんな)の声階段(はしご)の口に響きぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それかと思ふと、夜の九時過に湯へ行つて来て、アノ階段(はしご)の下の小さな室で、一生懸命お化粧(つくり)をしてる事なんかあるんだ。正直には正直な様だがね。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
厠(かわや)は階段(はしご)を下りたところにあった。やはり石菖(せきしょう)の鉢(はち)が置いてあったり、釣(つ)り荵(しのぶ)が掛けてあったりした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
かれはまんなかに広く蒲団(ふとん)を敷いて、闇(やみ)の空にチラチラする星の影を見ながら寝た。母親が階段(はしご)を上って来て、あけ放した雨戸をそッとしめて行ったのはもう知らなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
眼をギラギラ光らして舌を出し乍ら、垢づいた首巻を巻いて居たが、階段(はしご)を降りる時は再(また)顔を顰蹙(しか)めて、些(ちよい)と時計を見上げたなり、事務の人々には言葉もかけず戸外(そと)へ出て了つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
苦い顔をして階段(はしご)を上(あが)つて、懐手をした儘耳を欹(そばだ)てて見たが、森閑として居る。右の手を出して、垢着いた毛糸の首巻と毛羅紗(けラシヤ)の鳥打帽(とりうち)を打釘に懸けて、其手で扉(ドア)を開けて急がしく編輯局を見廻した。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)