金儲かねもう)” の例文
「風俗を叩きこわそう、高邁こうまいに生きよう、八百屋、魚屋のような、金儲かねもうけのための絵を葬むるんだ、真の絵はおれたちのなかにある」
おれの女房 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
金儲かねもうけだときかされると、途端におかね婆さんは歯ぐきを出して、にこにこし、つまりは何の造作もなく説き伏せられてしまった。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「どうせ、田舎のことだから、ろくなことはできはしないけれど、ちょっと遊びに行くにはいい。貞公ていこう、うまい金儲かねもうけを考えたもんだ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
それだけならば格別のことはなかったのですが、ここに清次が金儲かねもうけをしながら呼売りをして、草津の宿まで来た時分のことです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが、それはただ金儲かねもうけのためです。美術とは云えません。わたしは模型人形で暮らしを立てて、一方で美術人形の研究をしているのですよ。
悪霊物語 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そうです。ジュリア歌う——お客さま悦びます。わたくしも悦びます。なかなかよい金儲かねもうけできますから、はッはッはッ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
会社の仕事や、金儲かねもうけのことが、始終頭にあった。そして床を離れると、じきに時計を見ながらそこを出た。閉めきった入口の板戸が急いで開けられた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一家の葛藤を処理するためのいささかの金ですらが筆のかせぎでは手取早てっとりばやく調達しがたいのを染々しみじみと感じたかれは、「文学ではとても駄目だ。金儲かねもうけ、金儲け!」
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「金持ちのやる仕事だから、金儲かねもうけにゃ極まっているが、一体、どんなことをやるのが銀行てえもんでしょうか」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど私は、彼より世才もあり金儲かねもうけの術も知っています。だが、素質に於ては到底年少の彼に及びません。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ラマの化身というとこの辺では駄目ですけれども、田舎の方に行くとうやまわれた上によい金儲かねもうけになる。あなたのように堅い事ばかり言っては金儲けは出来ません
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ところがこの新聞が妙に人気を得て、たくさん売れ出したので、そのおかげで金儲かねもうけが出来、自分の実験にも十分の費用をつかうことができるようになりました。
トーマス・エディソン (新字新仮名) / 石原純(著)
人生の方法なり、補助物なり、人間がその人格を発揮はっきするために道具に用うべきものであるという点に重きを置き、実業や金儲かねもうけを今日のごとく物質ぶっしつ的の職業とみなさないで
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「安さんが例の発明や、金儲かねもうけの話をするとき、その聞き賃におごるのかも知れない」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
階下では妻と子が病気で呻吟しんぎんしているが、近頃は薬餌やくじの料も覚束おぼつかない有様であるのに、もしベルリオーズが金儲かねもうけの俗事を放擲ほうてきして、交響曲シンフォニーの作曲に没頭ぼっとうしたらどんなことになるだろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
巴小路の住人にとっては、巴御殿の存在は、とんだ金儲かねもうけの種なのであった。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自分達の賃銀や、労働時間の長さのことや、会社のゴッソリした金儲かねもうけのことや、ストライキのことなどが書かれているので、皆は面白がって、お互に読んだり、ワケを聞き合ったりした。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
取捉とっつかまえて、あわよくば、見せ物にして金儲かねもうけをしてやろう
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
同じ金儲かねもうけの話にしても、弥勒あたりでは田舎者の吝嗇けちくさいことを言っている。小学校の校長さんといえば、よほど立身したように思っている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
これは皆、しかるべき需要者があってする仕事で、これだけでもけっこう商売になりそうですが、与八はこれで金儲かねもうけをしている様子もありません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
金儲かねもうけで埋まっているようで、金をらせる坩堝るつぼのようで、得体のわからない貿易港から、ふしぎにもよく仕事のアナを探って来る彼は一種の天才だった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上、金儲かねもうけの為に、法網ほうもうをくぐることばかり考えている悪者であった。だが、倭文子は畑柳が好きだった。彼が儲けてくれるお金は、畑柳その人よりも、もっと好きだった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「——医が仁術だなどというのは、金儲かねもうけめあてのやぶ医者、門戸を飾って薬礼稼ぎを専門にする、似而非えせ医者どものたわ言だ、かれらが不当に儲けることを隠蔽いんぺいするために使うたわ言だ」
彼等は金儲かねもうけのためには義理人情もない云々と書き立て、——それに比べると川那子丹造鑑製の薬は……と、ごたくを並べ、甚しきは医者に鬼の如き角を生やした諷刺画ふうしがまで掲載し、なお
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
○○獣の特ダネを何処どこかの新聞記者に売りつけて、お金儲かねもうけをしようや
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところで執法僧官がラサ府において大いに金儲かねもうけをしなくてはならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
金儲かねもうけの面白さがないときには、せめて生活でも楽しまんけりゃ」
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
金儲かねもうけの規模の世界的なることに於て、今の日本人は梯子はしごをかけても及ばないことを知り、異人が必ずしも日本の国をとりに来たというわけのものではなく
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『どういたしまして、御領主様の凶変に、なかなか金儲かねもうけなどという不埓ふらちな考えは出もいたしませぬ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、丈五郎のは金儲かねもうけが主眼ではなく、正常人類への復讐なんだから、そんな商売人の何層倍も執拗で深刻な筈だ。子供を首丈け出る箱の中に入れて、成長を止め、一寸法師を作った。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
立派な山を疵物きずものにして、車を仕掛けなければならない理由が七兵衛には少しもわかりませんから、コイツ山師共が、何かの口実で、木を伐って金儲かねもうけをするのだなと思い込んでしまいました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして映画人のスキャンダルをあさり、それを種に金儲かねもうけをすることを考えた。せ型の貴族貴族した青白い顔に似合わぬ、凄腕すごうでを持っていた。弱点を握った相手でなければ金を貸さなかった。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ふうむ……面白いこと? ……それは金儲かねもうけになりそうな話か」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、当節、洋学がお出来になれば、お金儲かねもうけはお望み次第なのに」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『貴様たちは、金儲かねもうけに忙しいのじゃろう。町人はよいなあ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十五や十六の歳で、金儲かねもうけの話といえば寸分のすきもなく、金儲けの仕事といえばいっこう臆面がない。こんなのも珍しいと感心することもあるが、多くの場合には、そのこましゃくれを面憎く思う。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「つまり、お金儲かねもうけのためでございます」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)