量見りょうけん)” の例文
「なにしろたのみとするせがれでしたので、量見りょうけんがせまいようですが、当分とうぶん他人たにんさまのためにどうこうする気持きもちもこりません。」
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかも生後三月目みつきめに死んでしまっているのです。母はどう云う量見りょうけんか、子でもない私を養うために、捨児の嘘をついたのでした。
捨児 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
=どうだ天賦自然の性質をためようなんて量見りょうけんは間違っていよう。荘先生がお聞きになったら却って苦々しくお思いになろう。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
だが——もっと肝腎かんじんな武蔵を捕まえることのほうは、どういう量見りょうけんか、沢庵は捜しにも歩かないし、気にかけている風もない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父のひとりよがりや、虚栄心きょえいしんや、さもしい見栄みえや、けちな量見りょうけんは、事ごとに濃厚に表われて、いちいち私をくさくささせるばかりであった。
土台、兄貴の頑固ときたら、何も知らんくせに、自分一個の量見りょうけんで押し通すなどと、おれにさえ聴こうとはせぬ。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「親分、世の中にこの綺麗なものを見ると痛めつけたくなるというのは、一番悪い量見りょうけんじゃありませんか、ね」
そのがい一端いったんのみを見てただちにそのものの無用をろんずるのは、あまりにあさはかな量見りょうけんであるかもしれない。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ルピック夫人——にんじん! お前はどういう量見りょうけんでいるんだか、あたしたちにゃもうわからないよ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
昔よりわたくしなしという言葉は公平なる態度を現すに用いられるが、無私むしというは狭い量見りょうけんのない、おのればかりが正しいのでない、またおのれの利益のためでないという意味である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
何となれば若い男女はまだ配偶たる人物を鑑別するだけの見識がありません。自分では鑑別し得る量見りょうけんでもまだ社会の経験が足りないから到底確実な判断を下す事が出来ません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
兄弟だからまさかな時にゃ世話になりゃええという量見りょうけんでおられちゃ共倒ともだおれじゃ
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
乃公の方にも量見りょうけんがある。乃公は無理に結婚式へ行ってやるから宜い。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「いくら商売柄だって、それじゃお前、あんまりじゃないか。だから私の量見りょうけんじゃ、取り換えた方が好いだろうと思うのさ。」
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『おい、夏駿。ほかの者が寝こんだらしいから云うが、君はいったい、どういう量見りょうけんで、泥棒なぞ始めたんだい。よも、本性じゃあるまいが』
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつも、自分じぶんだけとくをしようとする、家主やぬし量見りょうけんがちがっているから、じゅうげられたのは、ばちがあたったのだよ。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんな立ちまさった量見りょうけんからばかりで、あの子を巴里パリへ置いときませんって、——巴里は私達親子三人の恋人です。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
殺す量見りょうけんなどは微塵も無い。気に入らなきゃ出て行くが宜い。どうせお前が勝手に飛込んで来た家じゃないか、死のうと生きようと、お前の好きなように——
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
どういう量見りょうけんで、どこへ持って行ったってあまり貸しそうもない金かんざしなどをぐるぐる方々の質屋へ出したり入れたりして歩いているのかわからないが、とにかく
即ち世人をしてありがたいと感激せしむる分子がなければ何の役にも立たん。筆の先で文章を書く量見りょうけんでは決して世道人心を裨益する事が出来ん。精神を以て書いたものでなければならん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「あの爺さんは猶太ユダヤ人だがね。上海シャンハイにかれこれ三十年住んでいる。あんな奴は一体どう云う量見りょうけんなんだろう?」
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
くれてあるのじゃ。……今更、どこへ追いやられようぞ、どうぞ量見りょうけんして、この仕事場へ、入れてくだされ
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな量見りょうけんだと、このむらからしてしまうぞ!
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大原は昨日の御馳走にてズット親しくなりし量見りょうけん
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お前らも、その組だろう。——こらこらおさい銭をなぜおいてゆかん、そんな量見りょうけんでは、女にもてないぞ
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、わたしの量見りょうけんでは、まずさいの目をたのむよりも、覚束おぼつかないと覚悟をきめていました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「うーむ、ではとくからの量見りょうけんであろう。なぜ、いやとあらば早くから、きッぱりといいきらぬッ!」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、今になって考えれば、それは、弟を買いかぶった、虫のいい量見りょうけんに過ぎなかった。いや、弟を見上げすぎたというよりも、沙金のみだらなびのたくみを、見下げすぎた誤りだった。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
良い家臣を持ちたいなら、持てるような資格を自分の人間に持て。——もしこの後、なお、量見りょうけんがあらたまらぬときは、こんどこそ、追放して、かまいつけることではないぞ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな男に引懸ひっかかるというのは一体どういう量見りょうけんなのでしょう。………
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『だまれっ。——最前さいぜんから、何を訊ねても、ただ御尤ごもっともで、御尤で、とばかり申し居って、それでは一向に量見りょうけんが、わからんではないか。和解いたすのか、せぬ気か、はっきりとお答えせいっ』
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくら天下の早足はやあしとじまんをする燕作えんさくでも、騎手のりて巽小文治たつみこぶんじ、馬は逸足いっそく御岳みたけ草薙くさなぎ、それを相手に足くらべをしたところで、もとよりおよぶわけはなく、勝とうというのがしのつよい量見りょうけん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人おくも子たちも、みな死の腕に抱いて、城とともに、果て終らんとしたは……長政が小さい量見りょうけんであった。すでに死んだ身と思い極めながら、なお浅ましい愛憎やら煩悩ぼんのうだけはのこしていたのじゃ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お稲さんの量見りょうけんがわからねえ」
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するなら、おれにも、量見りょうけんがある
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)