逢瀬あふせ)” の例文
あゝ、それがいか許り昨夜よべの八つ橋との逢瀬あふせを、睦言むつごとを、絢爛多彩な絵巻物として、無言のうちに悩ましく聴くものゝ心の中に想像させて呉れたらうことよ。
吉原百人斬り (新字旧仮名) / 正岡容(著)
やがて帰りんと頼めし心待も、つひあだなるをさとりし後、さりとも今一度は仮初かりそめにも相見んことを願ひ、又その心の奥には、必ずさばかりの逢瀬あふせは有るべきを、おのれと契りけるに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
言拵いひこしらへ我が家を出ると小夜衣がもとへ其まゝいたりしかばたえて久しき逢瀬あふせかとほかの客を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
逢瀬あふせなき涙の川に沈みしや流るるみをの初めなりけん
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
逢瀬あふせわかれ辻風つじかぜのたち迷ふあたり、さかりたる
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
のち逢瀬あふせはいつはとて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
逢瀬あふせもほんとに
野口雨情民謡叢書 第一篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
ともあれ勘藏かんざうといふものある以上いじやうなまなかのこと言出いひだしてうたがひのたねになるまじともがたしおためにならぬばかりかはひととの逢瀬あふせのはしあやなくたえもせばなにかせんるべきみちのなからずやとまどふはこゝろつゝむ色目いろめなにごともあらはれねど出嫌でぎらひときこえしおたか昨日きのふいけはた師匠ししやうのもとへ今日けふ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人にも知られず、我身一つの恥辱ならんには、このおもて唾吐つばはかるるもいとはじの覚悟なれど奇遇は棄つるに惜き奇遇ながら、逢瀬あふせは今日の一日ひとひに限らぬものを、事のやぶれを目に見て愚にはやまるべきや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
逢瀬あふせわかれ辻風つじかぜのたち迷ふあたり、さかりたる
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
さばかり間遠まどほなりし逢瀬あふせなるか、言はでは裂けぬる胸の内か、かく有らではあきたらぬ恋中こひなかか、など思ふに就けて、彼はさすがに我身の今昔こんじやくに感無き能はず、枕を引入れ、夜着よぎ引被ひきかつぎて、寐返ねがへりたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)